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ジム・フィットネスクラブにおける業務用エアコンの空調管理と機器の選定方法を解説

ジムやフィットネスクラブの運営では、利用者が快適かつ安全にトレーニングできる環境づくりが欠かせません。その環境の質を大きく左右するのが、業務用エアコンによる空調管理です。

単に「涼しい」「暖かい」といった温度調整だけでなく、湿度・換気・エリアごとの気流制御までを最適化することが求められます。また、ランニングコストの削減や衛生環境の維持、災害時の事業継続(BCP)対策までを視野に入れた空調システム選定が、経営の安定と顧客満足度の向上につながります。

この記事では、ジム・フィットネスクラブにおける空調管理の重要性や業務用エアコンの選び方、省エネ化に貢献するGHP(Gas engine driven Heat Pump:ガスヒートポンプ)、さらに導入コストを抑える補助金制度までを解説します。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」

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目次[非表示]

  1. 1.ジム・フィットネスクラブにおける空調管理の重要性
    1. 1-1.温度・湿度管理の基準と最適化
    2. 1-2.換気とCO2濃度管理による衛生環境の維持
    3. 1-3.冬場・エリア別の温冷切替制御
  2. 2.ジム・フィットネスクラブに最適な業務用エアコンの選び方
    1. 2-1.馬力・面積・天井高から見る最適能力の算出
    2. 2-2.タイプ別の特徴
    3. 2-3.衛生性・メンテナンス性とフィルター管理
  3. 3.GHP(ガスヒートポンプ)やガスコージェネレーションによる効率的な空調運用
    1. 3-1.GHPの特徴とメリット
  4. 4.補助金・助成金で導入コストを抑える方法
  5. 5.まとめ

1.ジム・フィットネスクラブにおける空調管理の重要性

ジムやフィットネスクラブの空調管理は、利用者の快適性・安全性・運営コストに大きく関わる重要な要素です。多くの人が運動する空間では、温度や湿度、CO2濃度の管理がトレーニング効率や体調に直結します。

エリアごとの発熱量や利用目的に応じて環境を最適化することで、熱中症や不快感、カビの発生などを防ぎ、快適な空間を維持できます。空調の適切な制御は、利用者満足度の向上と施設価値の維持に欠かせません。

1-1.温度・湿度管理の基準と最適化

ジムやフィットネスクラブでは、利用者が快適にトレーニングを継続できるよう、温度20〜25℃・湿度40〜60%を維持することが基本です。環境省の『夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン 2020』によると、21~25℃でも激しい運動をする場合は熱中症のリスクがあり、運動の合間に積極的に水分を摂取することが求められています。

この範囲を超えると体感温度が上昇し、脱水症状や熱中症のリスクが高まります。反対に、湿度が下がりすぎるとインフルエンザや風邪などの感染症が拡大するおそれがあります。

▼暑さ指数と注意事項

暑さ指数と注意事項

画像引用元:環境省熱中症予防情報サイト『夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン 2020

また、夏場は除湿による湿度調整、冬場は加湿による乾燥防止を行うことが重要です。マシンエリアやスタジオ、更衣室やホットヨガエリアなど、発熱量や用途が異なるエリアでは、ゾーン別制御やセンサー連動型の自動制御システムを導入することで、効率的かつ快適な環境づくりが可能になります。

温湿度の適切な管理は、利用者の安全と快適性を確保すると同時に、空調効率の最適化や省エネルギー化にもつながります。

出典:環境省熱中症予防情報サイト『夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン 2020

1-2.換気とCO2濃度管理による衛生環境の維持

運動量の多いジムでは、利用者の呼吸によって室内のCO2濃度が上昇しやすく、頭痛や倦怠感、集中力の低下などを引き起こすおそれがあります。また、空気の滞留は感染症拡大のリスクを高めるため、適切な換気管理が不可欠です。

厚生労働省が定める『建築物環境衛生管理基準』では、CO2濃度を1,000ppm以下に維持することが求められています。CO2センサーと連動した自動換気システムを導入すれば、濃度の上昇時に換気量を自動調整でき、衛生管理と省エネを両立できます。さらに、給気と排気のバランスを最適化し、高性能フィルターや全熱交換器を併用することで、清潔で安全な空気環境を維持することが可能です。

適切な換気管理は、利用者の健康維持やパフォーマンス向上だけでなく、感染症対策や施設全体の信頼性向上にも寄与します。

出典:厚生労働省『建築物環境衛生管理基準

1-3.冬場・エリア別の温冷切替制御

ジムの空調管理で特に課題となるのが、季節の変わり目や、異なるエリア間での同時冷暖房の必要性です。

冬場でも、激しい運動をするトレーニングエリアでは発汗により冷房が必要になる一方、着替えを行う更衣室やリラックスを目的としたスタジオでは暖房が必要といった状況が頻繁に発生します。

従来のシステムでは、冷暖房の切り替えが一括制御のため、特定のエリアに合わせた柔軟な温度設定が困難でした。この問題を解決し、利用者の快適性を確保するためには、同時冷暖房機能付きの業務用エアコンの導入が不可欠です。

一つの室外機で、複数の室内機が同時に冷房・暖房を運転できるこのシステムは、エリアごとの利用状況や体感温度に合わせて最適な運転モードを選択できるため、快適性の向上とエネルギーの無駄を削減する大きなメリットがあります。

2.ジム・フィットネスクラブに最適な業務用エアコンの選び方

ジム・フィットネスクラブに適した業務用エアコンを選定する際は、単に価格やブランドで決めるのではなく、施設の面積や天井高、利用人数、そして各エリアの用途といった具体的な条件から、適切な能力(馬力)と機種(タイプ)を選定することが重要です。

2-1.馬力・面積・天井高から見る最適能力の算出

業務用エアコンの能力(馬力)は、設置する空間の面積や用途に基づいて算出されますが、ジムにおいては天井高が特に重要です。一般的に、天井高が高いほど空気の層が厚くなり、冷房や暖房の効率が低下するため、性能に余裕を持たせた機種を選ぶ必要があります。

ジムでは、空気の循環効率や照明・ダクトとの干渉、そして利用者の体感温度のバランスから、天井高は約2.8m前後が推奨されることが多いです。しかし、3mを超える高天井空間も存在します。

この場合、通常のオフィスビルよりも大きな負荷がかかるため、目安面積よりも1〜2ランク上の馬力を選定するか、高天井対応モデルを選ぶことが望ましいです。

なお、業務用エアコンの選び方や面積に対する馬力の目安などは、こちらの記事でも詳しく解説しています。

2-2.タイプ別の特徴

業務用エアコンには、設置環境や用途に応じてさまざまなタイプがあり、ジムの各エリアに最適なものを選ぶ必要があります。特に、利用者の動線や内装デザインを考慮し、効率的かつ見た目にも配慮した機種選定が求められます。

▼タイプ別の比較

タイプ

主な特徴

最適な設置エリア

天井埋込型 (4方向吹出し)

広い範囲に均一に空調を送る。内装になじみやすい。

メインのトレーニングエリア、大空間のスタジオ

天井埋込型 (1・2方向吹出し)

細長い空間や壁際に適している。

細長い通路、窓際、ゾーンごとの独立したスペース

ダクト型(ビルトイン)

室内機を天井裏に隠し、複数の吹き出し口で空調。ゾーン制御に便利。

複数の小部屋や更衣室、内装デザイン重視のエリア

壁掛け型

設置が容易で、狭いエリアや個別制御が必要なエリア向き。

スタッフ控室、シャワールームなどの狭い個室

大空間で利用者の発熱量が多いメインフロアには、天井埋込型で広範囲をカバーするのが一般的です。一方、複数の個室や更衣室、特定の温度管理が必要なスタジオなど、ゾーンごとの細かな制御を行いたい場合には、ダクト型を導入し、複数の吹き出し口を設けることで柔軟に対応できます。また、設置スペースが狭いエリアや、独立した運転が必要なエリアには壁掛け型が適しています。

最適な空調機器の選定は、省エネ効果を大きく左右します。さらに詳しく省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを知りたい方は、以下の資料をご活用ください。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」

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2-3.衛生性・メンテナンス性とフィルター管理

ジム・フィットネスクラブは、利用者が運動によって大量の汗をかき、ホコリや臭いが発生しやすい環境です。そのため、業務用エアコンの選定においては、衛生性の確保とメンテナンスの容易さが重要です。

衛生性の高い環境を維持するためには、自動フィルター清掃機能や、抗菌・抗ウイルス仕様のフィルターを採用した機種を選ぶことが有効です。自動清掃機能があれば、日々の清掃の手間が大幅に削減され、常にフィルターの目詰まりを防ぎ、エアコン本来の性能を維持することにつながります。また、フィルターが清潔に保たれることで、室内に排出される空気もクリーンになり、感染症対策にも貢献します。

しかし、自動清掃機能があっても、定期的なプロによる洗浄(内部洗浄)は不可欠です。熱交換器や内部のファンに付着したカビや汚れは、機器の効率を低下させ、悪臭の原因となるため、定期洗浄の頻度や容易性も機種選定の重要な判断基準となります。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい【法定点検チェックリスト】設備管理者が知っておきたい法定点検の基本知識

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3.GHP(ガスヒートポンプ)やガスコージェネレーションによる効率的な空調運用

ジム・フィットネスクラブの運営においては、トレーニングエリアやスタジオでの大きな空調負荷に加え、シャワールームや更衣室での大量の給湯需要も発生します。

特にシャワー利用が集中する時間帯には、給湯と空調の両方で大きなエネルギー消費が発生するため、これらをGHP(ガスヒートポンプ)やガスコージェネレーションで効率的に運用することが注目されています。

3-1.GHPの特徴とメリット

GHPの特徴は、ガスエンジンでエアコンのコンプレッサーを動かす点にあり、これにより電気式エアコン(EHP)と比べて消費電力を大幅に抑えることができます。

▼主なメリット

電力負荷の抑制とBCP対策

電力に大きく依存しないため、契約電力を抑えることができ、電力ピークカットに貢献します。また、ガスの供給さえあれば運転可能なため、停電時のBCP(事業継続計画)対策としても有効です。

冬場の立ち上がりが速い

電気式に比べて冬場の暖房の立ち上がりが速く、外気温が低い環境でも安定した暖房能力を発揮します。GHPの導入は、ジムのエネルギー利用構造そのものを効率化する戦略的な投資といえます。

GHPについてはこちらの記事でも解説しています。

なお、GHP・EHPの比較とそれによる空調機器選びのポイントはこちらの資料をご確認ください。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい【GHP・EHP徹底比較ガイド】長期的視点での空調機器選びのポイント

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4.補助金・助成金で導入コストを抑える方法

高性能な空調設備の導入・改修は、長期的なエネルギーコスト削減につながる一方で、初期導入コストが課題となるケースも少なくありません。

そこで活用したいのが、国や自治体が推進する省エネ化を目的とした補助金・助成金制度です。具体例として、国土交通省の『既存建築物省エネ化推進事業』があります。これは、既存の非住宅建築物におけるエネルギー消費性能の向上を目的とした改修工事を支援する制度で、空調・換気・給湯・照明などを高効率設備へ更新する際の工事費用の一部を補助します。

▼既存建築物省エネ化推進事業(国土交通省)の概要

既存建築物省エネ化推進事業(国土交通省)

画像引用元:国土交通省『令和8年度 住宅局関係 予算概算要求概要

なお、補助金の制度内容や公募期間は年度や事業ごとに異なります。導入を検討する際は、専門業者や行政機関に相談し、最新情報を確認したうえで進めることが重要です。適切な制度を活用することで、高性能設備の導入と財政負担の軽減を両立できます。

なお、空調設備の新設やリニューアルに活用できる補助金制度は、こちらの資料をご確認ください。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「空調設備導入に活用できる補助金と申請ステップを紹介」

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出典:国土交通省『令和8年度 住宅局関係 予算概算要求概要

5.まとめ

この記事では、ジム・フィットネスクラブに設置するエアコンについて以下の内容を解説しました。

  • ジム・フィットネスクラブにおける空調管理の重要性

  • ジム・フィットネスクラブに最適な業務用エアコンの選び方

  • GHP(ガスヒートポンプ)による効率的な空調運用

  • 補助金・助成金で導入コストを抑える方法

ジム・フィットネスクラブの空調管理は、利用者の快適性と安全性を高め、施設運営の効率を左右する重要な要素です。温度・湿度の最適化やCO2濃度の管理、エリアごとの同時冷暖房機能は、いまや欠かせない基準となっています。

機器選定では、施設の面積や天井高、利用人数を踏まえ、余裕のある能力を持つ機種を選ぶことが、省エネと長寿命化のカギです。

最適な空調システムの導入は、施設価値と競争力の強化につながります。導入時は専門業者に相談し、補助金制度を活用して効果的な設備投資を実現することが望まれます。

TAKEUCHIでは、業務用エアコンの導入設計から施工、保守メンテナンスまでトータルサポートしています。施設の特徴や使用環境に合わせた空調設計をプランニングいたします。

→【おすすめ!】記事の最後に読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」

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