
冷房を使用する際の節電術。施設の省エネを実現する空調設備の選び方
近年、7~8月ごろになると全国的に厳しい暑さが続き、最高気温が35℃以上の猛暑日になる地域も広い範囲で見られるようになっています。
学校・介護施設・工場・オフィスなどでは、快適な施設環境の維持や熱中症予防の観点から、適切に冷房を使用することが求められます。
一方、夏場の冷房によって施設内のエネルギー使用量が増えることにより、電気料金が高くなる問題があります。施設管理者にとって、冷房使用時の節電対策は欠かせない取り組みの一つです。
この記事では、空調設備の消費電力や冷房の運転時に実施できる節電術、省エネを目的とした空調設備の見直し方について解説します。
なお、省エネを実現する空調選びについてはこちらの資料をご確認ください。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」
目次[非表示]
1.施設の空調設備における消費電力
夏場になると1日を通して冷房を使用することがあり、空調設備による消費電力が増加しやすくなります。
▼【施設別】消費電力に占める空調設備の割合(※1)
施設 |
消費電力の割合 |
学校(小・中・高) |
37.0% |
医療機関 |
34.7% |
工場 |
17.0%(※2)
|
オフィス |
48.6% |
ホテル・旅館 |
29.2% |
飲食店 |
50.5% |
経済産業省『夏季の省エネ・節電メニュー 事業者の皆様』を基に作成
オフィスや飲食店では、空調設備の稼働にかかる消費電力の割合が約50%を占めており、冷房による電気料金への影響は大きいと考えられます。
工場についてはほかの施設と比較して消費電力の割合が少なくなっていますが、生産設備の稼働によって約80%を占めていることが背景にあります。
※1…東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の地域が対象
※2…照明をはじめとする一般設備を含む
出典:経済産業省『夏季の省エネ・節電メニュー 事業者の皆様』
2.冷房の運転時に実施できる節電術
節電に取り組む際は、冷房の設定温度や使用環境などを工夫するとともに、空調設備のパフォーマンスを維持できるようにすることがポイントです。
2-1.設定温度を緩和する
環境省の『エアコンの使い方について』によると、冷房の設定温度を1℃緩和することで消費電力量が約13%削減されるといわれています。
また、快適性を確保しつつ省エネ化を目指すための室温として、夏季では28℃(※)が推奨されています。室内を冷やしすぎず、快適性を維持できる範囲で冷房の設定温度を緩和させることで節電につながります。
冷房の設定温度を26℃から28℃に上げた場合の節電効果は、以下のとおりです。
▼設定温度の緩和による節電効果の例
施設 |
節電効果 |
工場 |
6% |
オフィス |
4.1% |
ホテル・旅館 |
1.6% |
飲食店 |
4.0% |
経済産業省『夏季の省エネ・節電メニュー 事業者の皆様』を基に作成
冷房の設定温度や温度調節のポイントは、こちらの記事をご確認ください。
※体感温度には個人差があるほか、地域や外気温、施設の環境などによって快適と感じる室温は異なります。
出典:経済産業省『夏季の省エネ・節電メニュー 事業者の皆様』
2-2.日射による室温上昇を防ぐ
日射による室温上昇を防ぐことも、冷房運転時の節電につながります。
夏場の強い日射が窓から室内に入ると、室温が上昇することによって冷房の運転負荷がかかり、消費電力量が増加しやすくなります。
カーテンやブラインドを設置して日射を遮ったり、窓ガラスに遮熱フィルムを貼って日射による熱が伝わりにくくしたりすることで、冷房効率を高められます。
▼日射を遮ることによる節電効果の例(※)
施設 |
節電効果 |
オフィスビル |
3.7% |
医療施設 |
1.3% |
経済産業省『夏季の省エネ・節電メニュー 事業者の皆様』を基に作成
※ブラインド・カーテン・ひさし・すだれ・遮熱フィルムを活用して日中の日射を遮った場合
出典:経済産業省『夏季の省エネ・節電メニュー 事業者の皆様』
2-3.定期的に内部クリーニングを依頼する
冷房効率を維持するために、定期的に内部クリーニングを依頼することが望まれます。フィルターにホコリや汚れが付着していると、空気の循環や熱交換能力が低下して消費電力量が増える原因になります。
業務用エアコンの専門事業者に依頼して内部クリーニングを実施することで、効率的な運転を維持できるようになり、節電につながります。
空調設備のメンテナンスについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
3.省エネによる節電を実現するには空調設備の見直しも重要
冷房の使用において節電を実現するには、省エネにつながる空調設備へ見直すことも重要です。空調設備を見直すポイントには、以下の3つが挙げられます。
3-1.広さや使用環境に応じた馬力の選定
冷房効率を維持して消費電力を抑えるには、部屋の広さや使用環境に応じて業務用エアコンの馬力を選定することがポイントです。
業務用エアコンの馬力とは、冷暖房を行う能力を表す単位です。数字が大きくなるほど強い出力で冷暖房を行えます。
▼馬力に適した使用環境と広さの目安
馬力 / 場所 |
一般的な場所 (事務所・病院・学校・ホテルなど) |
熱源がある場所 (飲食店・工場など) |
1.5馬力 |
24~35m2 |
11~17m2 |
1.8馬力 |
26~39m2 |
12~20m2 |
2.0馬力 |
29~43m2 |
14~22m2 |
2.3馬力 |
33~49m2 |
15~24m2 |
2.5馬力 |
37~55m2 |
17~27m2 |
3馬力 |
47~70m2 |
22~35m2 |
4馬力 |
66~97m2 |
30~49m2 |
5馬力 |
82~122m2 |
38~61m2 |
6馬力 |
94~139m2 |
43~70m2 |
8馬力 |
132~195m2 |
61~97m2 |
10馬力 |
165~243m2 |
76~122m2 |
12馬力 |
197~291m2 |
91~146m2 |
部屋の広さに対して馬力が足りない場合は、冷房の能力が不足してフルパワーの稼働状態となるため、消費電力の増加につながります。また、同じ広さでもコンロや製造機械などの熱源がある施設では冷房が効きにくくなることから、より大きな馬力が必要になります。
3-2.ピークデマンドカット機能の活用
業務用エアコンのなかには、省エネに役立つピークデマンドカット機能が搭載されている機種があります。
ピークデマンドカット(※)とは、空調による消費電力量が設定した上限を超えた際に、自動で運転を一時停止して目標電力値を超えないように調整する機能です。
冷房を使用するシーズンにおいて部屋の用途や使用環境に応じたデマンド制御を行うことにより、ピーク時の消費電力量を抑えられます。その結果、電気基本料金を削減することが可能です。
※製品によって機能名は異なります。
3-3.エネルギー消費効率がよい最新機種へのリニューアル
冷房による電気料金を抑えるには、エネルギー消費効率がよい最新機種へのリニューアルが有効です。
業務用エアコンの最新機種は、インバータ技術の採用や熱交換器の改良、運転制御機能の追加などが行われています。数十年前の古い機種と比べて少ないエネルギー消費で効率的な運転を行えることから、節電効果が期待されます。
▼最新機種と旧機種の比較(※)
比較機種 |
DAIKIN スカイエアシリーズ
『FIVE STAR ZEAS』
|
DAIKIN スカイエアシリーズ
『ZEASQ』
|
モデル |
2023年モデル
(省エネタイプ)
|
2008年モデル |
kWh |
1,829kWh |
5,467kWh |
年間電気料金 |
79,700円 |
154,300円 |
参考:DAIKIN 『FIVE STAR ZEAS』
kWhは、一定の期間で測定した消費電力量を表す単位です。数値が小さいほど少ない電力で効率的に運転する能力があることを示します。
最新機種と10年前機種の比較についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」
※DAIKINによって行われた一定条件での試算結果となり、電気料金はあくまで目安とされています。詳細はメーカーにご確認ください。
参考:DAIKIN『業務用エアコン(店舗・オフィスエアコン)スカイエアシリーズ FIVE STAR ZEAS』
4.まとめ
この記事では、冷房の使用における節電について以下の内容を解説しました。
- 施設の空調設備における消費電力
- 冷房の運転時に実施できる節電術
- 省エネによる節電を実現する空調設備を選ぶポイント
冷房の使用によって消費電力量が増えやすい夏場は、節電対策が欠かせません。運転時に行える節電術としては、設定温度の緩和や日射の対策、定期的な内部クリーニングの実施が挙げられます。
また、長期的なランニングコストの削減を図るには、高効率な運転で省エネを実現できる空調設備へと見直すことも一つの方法です。業務用エアコンを導入して数十年経過している場合は、新機種へとリニューアルされてはいかがでしょうか。
TAKEUCHIでは、学校・介護施設・工場・オフィスなどにおいて業務用エアコンのリニューアルをトータルサポートしています。施設の課題を踏まえた空調設計や機種の選定、アフターメンテナンスまでお任せください。
省エネを実現する空調設備の選び方について、こちらの資料をぜひご覧ください。