
業務用エアコンの冷房が効かない? 原因と解決策は? 予防のためにできること
業務用エアコンは、オフィスビル、商業施設、医療機関など、多様な環境において快適な室内環境を維持するために不可欠な設備です。しかし、時として冷房が効かないというトラブルが発生し、従業員の生産性低下、顧客の不快感、ひいてはビジネスの損失につながることがあります。
本記事では、業務用エアコンの冷房不良の一般的な原因を詳細に解説し、それぞれの原因に対する具体的な解決策と予防策を提供します。
空調トラブルは単なる不便さだけでなく、運用コストの増加や設備寿命の短縮にもつながるため、早期の特定と対策が重要です 。
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目次[非表示]
1.業務用エアコンの冷房が効かない一般的な原因
1-1.冷媒不足による冷房効率の低下
▶症状
冷房が効かない、または効きが悪いと感じる場合、最も多く見られる原因の一つが冷媒の不足です。
冷媒はエアコンが熱を交換し、冷たい空気を室内に送り出すために必要な物質です。冷媒が不足していると、エアコンは十分な冷却を行うことができず、冷房効率が著しく低下します。
▶原因
冷媒の不足は主に以下の原因で発生します。
冷媒漏れ:エアコンの配管や接続部から冷媒が漏れることがあります。これにより、エアコン内の冷媒量が不足し、冷房機能が正常に働かなくなります。
長期間の使用:時間が経過すると、冷媒が自然に減少することもありますが、通常はわずかな量です。しかし、漏れが発生すると、これが積み重なって冷媒不足が深刻になります。
▶解決策
冷媒が不足している場合、専門のエアコン修理業者による冷媒の充填が必要です。また、冷媒漏れが発生している場合は、漏れ箇所を特定して修理を行う必要があります。
冷媒の充填作業は通常、専門技術を要するため、自己判断で行うのは避け、プロの業者に依頼しましょう。
1-2.フィルターの詰まり
▶症状
冷房が効かない、または冷房効率が低下した場合、フィルターの詰まりが原因であることもあります。
エアコンのフィルターは空気中のホコリやゴミを取り除く役割を担っており、長期間使用しているとフィルターに汚れがたまり、空気の流れが阻害されます。このため、エアコンが効率よく冷房を行えなくなります。
▶原因
フィルターに溜まったホコリやゴミが、風の通り道を塞ぎ、冷房性能を低下させる原因となります。特に業務用エアコンは、常に多くの空気を循環させるため、フィルターが汚れやすいです。
▶解決策
定期的にフィルターを掃除することが大切です。フィルターは比較的簡単に取り外し、掃除することができるため、定期的に清掃を行うことで冷房効率を保つことができます。
フィルターを掃除しても改善しない場合は、フィルター自体の交換が必要な場合もあります。
1-3.室外機の不具合
▶症状
エアコンの室内機は正常に動作しているものの、冷房が効かない、または効きが悪い場合、室外機の不具合が原因となっていることがあります。
室外機は冷媒を冷却する役割を担っており、この部分に問題が発生すると冷房効率が大きく低下します。
▶原因
室外機に関する問題には、以下のようなものがあります。
室外機のファンの故障:室外機内のファンが故障すると、冷媒を効果的に冷却することができません。
室外機の汚れ:室外機の熱交換器(フィン)が埃やゴミで詰まっていると、効率よく熱を放出できず、冷房性能が低下します。
設置場所の問題:室外機が障害物で塞がれている場合や、風通しが悪い場所に設置されている場合も、効率的に冷房できません。
▶解決策
室外機が正常に稼働していない場合は、専門業者による点検と修理が必要です。室外機のフィンやファンの清掃を行い、必要に応じて部品の交換を行うことで、冷房性能を回復させることができます。また、設置場所が適切でない場合は、移設を検討することも考えられます。
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1-4.運転モードや温度設定の誤設定
▶症状
冷房が効かない原因として、運転モードや温度設定が誤っていることも考えられます。エアコンの設定が間違っていると、冷房が正常に機能しません。
▶原因
運転モードの設定ミス:エアコンが冷房モードになっていない、または「送風」「暖房」モードになっていることがあります。1台の室外機で複数の室内機を制御するビル用マルチエアコンを使用している場合、優先権をもった室内機が「暖房」モードを選択していると、他の室内機で「冷房」モードを選択できない場合があります。
温度設定が高すぎる:温度設定が高すぎると、エアコンは冷房効果を発揮しません。特に業務用エアコンは広い空間を冷却するため、温度設定を低くし過ぎると効率的に冷却できない場合があります。
▶解決策
リモコンやコントロールパネルで、対象の部屋だけでなく周辺の部屋も「冷房」モードが選択されていることを確認しましょう。また、温度設定を適切な範囲に設定(通常は25〜28℃が適正)し、エアコンを再起動して効果を確認します。
1-5.室内機や室外機のファンモーターの故障
▶症状
エアコンが全く冷えない、または冷風が出ない場合、ファンモーターの故障が原因となっている可能性があります。ファンモーターが故障すると、風を送ることができず、冷房効果が全く得られません。
▶原因
ファンモーターはエアコン内部の重要な部品であり、長期間使用することで摩耗や故障が発生します。また、異物が詰まることによってファンが動かなくなる場合もあります。
▶解決策
ファンモーターの点検と修理が必要です。故障が確認された場合は、部品の交換を行うことで問題を解決できます。
1-6.温度センサーの不良
▶症状
冷房の効きが悪く、室内温度が設定通りにならない場合、温度センサーの不良が原因かもしれません。温度センサーが正常に機能しないと、エアコンが室内の温度を正しく感知できず、冷房運転を停止したり、必要以上に冷房を行ったりします。
▶原因
温度センサーは、室内の温度を測定してエアコンに伝える重要な部品です。センサーの故障や誤作動が起こると、正確な温度管理ができなくなります。
▶解決策
温度センサーが故障している場合は、交換が必要です。修理業者に依頼し、センサーを点検・交換してもらうことが重要です。
1-7.外気の流入
▶症状
業務用エアコンは正常に運転しているにも関わらず、室内温度が設定通りにならない場合、屋外の空気が室内に入り込んでいる可能性があります。35℃を超える屋外の空気が流入すると、エアコンの冷房効果を打ち消してしまい、冷房効果を十分に得られなくなります。
▶原因
換気扇の使用:冷房と同時に換気扇を運転すると、冷えた室内の空気を排出し、暑い外気を室内に取り入れてしまいます。その結果、冷房効率が低下し、正確な温度管理ができなくなります。
換気目的による窓やドアの開放:多くの人が滞在する施設では、冷房使用中であっても感染症予防の観点から窓やドアを開放して、換気を行うケースがあります。その場合も換気扇の使用と同様、外気の流入により冷房効果が低下してしまいます。
▶解決策
厳しい暑さの中では、発生リスクの高い熱中症対策を優先し、換気を一時的に停止することも手段のひとつです。滞在人数が少なくなるタイミングなどで換気を実施するなどの工夫が必要になります。
また業務用エアコンと併用して、全熱交換器を使用することで冷房効率の低下を最小限に抑えながら、換気を実施することができます。
換気や全熱交換器についてはこちらの記事を参照下さい。
2.まとめ
この記事では、業務用エアコンの冷房が効かない原因とその解決策について以下の内容を解説しました。
- 冷媒不足による冷房効率の低下
- フィルターの詰まり
- 室外機の不具合
- 運転モードや温度設定の誤設定
- 室内機や室外機のファンモーターの故障
- 温度センサーの不良
- 外気の流入
業務用エアコンが冷房効かない原因には、冷媒不足やフィルターの詰まり、室外機の不具合、運転設定の誤り、ファンモーターの故障、温度センサーの不良、外気の流入などが考えられます。
問題の早期発見と適切な対策を講じることで、エアコンの冷房効率を回復し、快適な環境を維持することができます。
定期的なメンテナンスと専門業者による点検を行い、トラブルを未然に防ぎましょう。
TAKEUCHIでは、施設の快適な環境を維持するために、長期的な視点で空調設備の運用やリニューアルをサポートしております。課題に合った機種の選定や定期的な点検・メンテナンス、リニューアルを通じた空気環境の改善までお任せください。