
業務用エアコンの更新前に!購入・設置費用と省エネ×長期運用で考えるコスト相場
年々厳しさを増す夏の猛暑により、空調設備は快適で安全な環境を維持するために欠かせない重要なインフラとなっています。加えて日本では、夏の高温多湿だけでなく、冬の厳しい寒さなど季節ごとの気候変動も大きいため、効率的かつ安定性の高い空調設備の導入は、施設運営において極めて重要な要素です。
こうした背景のもと、業務用エアコンのリニューアルを検討する施設管理者にとっては、機器の選定から設置費用の見積もりまで、慎重な判断が求められます。適切な設備更新は、施設全体の快適性やエネルギー効率にも大きく影響します。
本記事では、業務用エアコンの購入費用や設置費用の相場を、施設管理の視点からわかりやすく解説し、リニューアルにかかる総費用や選定時に押さえるべきポイントをご紹介します。
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目次[非表示]
1.業務用エアコンの種類と施設への適応
業務用エアコンには、施設の規模や用途に応じて最適な機種が存在します。適切な機種選定は、初期投資だけでなく、長期的な運用コストにも大きく影響するため、慎重な検討が必要です。ここでは、代表的な業務用エアコンの機種をご紹介します。
1-1.天井埋込型エアコン
天井埋込型エアコンは、その名の通り天井内部に設置され、室内機が露出しないため、美観を重視する施設に最適です。1方向、2方向、4方向といったバリエーションがあり、オフィスビルや大型商業施設、会議室など、比較的広い空間での利用に適しています。多くのオフィスビルや商業施設で採用されており、普及率が高いタイプの室内機です。
1-2.壁掛け型エアコン
壁掛け型エアコンは、家庭用エアコンと同様の形状で、壁面に設置されます。設置工事が比較的容易であり、初期投資を抑えたい小規模なオフィスや店舗などで選ばれることが多いです。ただし、広い空間全体を効率的に空調するには能力的に限界があるため、大規模な施設や高い空調効率が求められる場所には不向きです。
1-3.ビルトインタイプエアコン
ビルトインタイプエアコンは、天井や壁に埋め込む形で設置され、室内機がほとんど見えないため、内装デザインを重視する施設に適しています。天井埋込型と同様に、空間全体を快適に空調できますが、設置にはより専門的な工事が必要となる場合があります。新宿区の高級ブティックやデザインオフィスなど、特に内装にこだわりのある施設で採用される傾向があります。
施設に最適なエアコンを選定する際には、単に初期費用だけでなく、設備の配置、設置場所の広さ、設置後のメンテナンス性、そして最も重要な空調効率を総合的に検討することが求められます。
2.業務用エアコン購入費用の相場
業務用エアコンの購入費用は、機種の種類、性能(冷暖房能力、省エネ性能など)、そして施設の規模によって大きく変動します。以下に示す相場はあくまで目安であり、実際の費用は個々の施設の状況や選択する機種によって異なることを理解しておく必要があります。
2-1.天井埋込型エアコンの購入費用相場
天井埋込型エアコンの購入費用は、機種や能力によって幅広く、30万円から80万円程度が相場です。より具体的な価格帯として、ある販売サイトの情報を見ると、天井カセット4方向のエアコンで、1.5馬力程度のシングルタイプであれば、工事費は別ですが約15万円から購入できる機種もあります。
一方、より高馬力で高機能な機種になると、10馬力クラスの超省エネタイプでは、メーカー最低価格が100万円を超えるものもあります 。このように、必要な能力や省エネ性能によって価格は大きく変動するため、施設のニーズに合った機種を選ぶことが重要です。
2-2.壁掛け型エアコンの購入費用相場
壁掛け型エアコンの購入費用は、一般的に10万円から20万円程度です。これは、比較的小規模な施設や店舗向けの一般的なモデルの価格帯です。
家庭用エアコンに近い価格帯ですが、業務用としてより高い耐久性や能力を持つ機種もあります。
ただし、これはあくまで機器本体のみの価格であり、設置工事費用は別途発生します。そのため、“工事費込み”で考えると、実際の費用は相場より高くなる点に注意が必要です。
2-3.ビルトインタイプエアコンの購入費用相場
ビルトインタイプエアコンは、天井裏への本体組み込みやダクト配管工事といった特殊施工が必要なうえ、デザイン性にも優れるため、他のタイプと比べて導入コストが高めです。本体費用と設置工事費をあわせた導入費用の相場は、50万円~100万円程度となります。
また、見た目の美しさだけでなく、個別の温度制御や高い省エネ性能を持つものが多く、初期投資は高くなりますが、長期的な運用コストを抑える効果が期待できます。
購入費用に関しては、単に価格だけでなく、機能性や冷暖房の能力を重視して選ぶ必要があります。特に、エネルギー効率の高いモデルを選ぶことで、ランニングコストを抑えつつ、施設全体の快適な環境を維持することが可能になります。
エアコンの種類 |
本体購入費用相場(万円) ※設置工事費用別途 |
注意点 |
天井埋込型 |
30~80万円 |
馬力や性能、省エネ性能によって大きく価格も変わる。 |
壁掛け型 |
10~20万円 |
一般家庭用と近く、小規模な施設・店舗向けで、広い空間には適さない。 |
ビルトイン型 |
50~100万円 |
設置初期費用は高いが、長期的な運用コスト削減の期待がある。 |
3.設置工事費用の相場
業務用エアコンの設置には、エアコン本体の価格に加えて、工事費が発生します。
設置場所や設置内容によって工事費は大きく変動するため、以下の相場はあくまで目安として捉え、実際の費用は必ず専門業者に見積もりを依頼することが重要です。
3-1.天井埋込型エアコンの設置工事費用相場
天井埋込型エアコンの設置費用は、10万円から30万円程度が相場です。
天井に埋め込むため、配管工事や室内機の設置が複雑になる場合もあります。また、天井や壁にアクセスするための工事が必要になる場合もあり、壁掛け型に比べて設置費用は高くなります。
3-2.壁掛け型エアコンの設置工事費用相場
壁掛け型エアコンの設置費用は、比較的安価で、3万円から10万円程度が相場です。
配管や電気工事が比較的簡単で、設置工事も短期間で完了することが多いため、コストを抑えることができます。
ただし、既存の配管穴がない場合や、特殊な配管工事が必要な場合は、追加費用が発生することがあります。
3-3.ビルトインタイプエアコンの設置工事費用相場
ビルトインタイプエアコンの設置費用は、20万円から50万円程度と、さらに高額になります。天井裏の梁やダクト、配線などとの干渉を避けるスペースを確保しながらの設置工事になり、下地構造を事前に確認します。また天井の張替えや下地補強などの内装の変更が必要になる場合があるため、費用は高くなる傾向があります。
特に、既存の建物に新たにダクトを設置するような場合は、大掛かりな工事が必要となり、費用も大きく増加する可能性があります。
どのタイプであっても工事内容によっては、古い設備の撤去費用や、床や天井の補修工事が別途必要になることもあります。そのため、必ず事前に現地調査を行い、工事費込みの詳細な見積もりを複数の業者から取得することが重要です。
エアコンの種類 |
設置工事費用相場(万円) |
天井埋込型 |
10~30万円 |
壁掛け型 |
3~10万円 |
ビルトイン型 |
20~50万円 |
4.業務用エアコンリニューアルの総費用
業務用エアコンをリニューアルする際は、エアコン本体の購入費用だけでなく、工事費込みの総額で考える必要があります。
施設の規模や必要な機能によって最適なエアコンの種類が異なるため、以下に示すのはあくまで一般的な相場であり、実際の費用は個々のケースによって大きく変動します。
4-1.50㎡程~の小規模なオフィスや店舗のリニューアル総費用
小規模なオフィスや店舗の場合、壁掛け型エアコンや小規模な天井埋込型エアコンを選択することが多いため、リニューアルの総費用は15万円から100万円程度となるのが一般的です。
これは、比較的安価な壁掛け型エアコンを選び、設置工事も比較的容易な場合に限ります。より高性能な機種や、天井埋込型エアコンを選ぶ場合は、費用はさらに増加する可能性があります。
4-2.300㎡程~の中規模なオフィスビルや商業施設のリニューアル総費用
中規模なオフィスビルや商業施設では、天井埋込型エアコンや、場合によってはビルトインタイプエアコンが選択されることが多く、また複数台のリニューアルとなるため総費用は500万円から1,500万円程度となるのが相場です。
これには、エアコン本体の購入費用だけでなく、比較的複雑な設置工事費用も含まれています。施設の規模や構造によっては、さらに費用が増加することもあります。
4-3.大規模施設や工場、ビル全体をカバーする場合のリニューアル総費用
大規模な施設や工場、ビル全体をカバーする場合には、高出力のエアコンが選ばれることが一般的であり、リニューアルの総費用は1,000万円から3,000万円程度、あるいはそれ以上になることもあります。
これらの施設では、特殊な空調システムが必要となる場合もあり、費用は高額になる傾向があります。
上記の総額はあくまで目安であり、実際の費用は施設の規模、既存設備の状況、選択するエアコンの種類や性能、そして設置工事の複雑さによって大きく左右されます。
施設の規模 |
リニューアル総費用相場(万円) |
小規模なオフィスや店舗 |
15~100万円 |
中規模なオフィスビルや商業施設 |
500~1,500万円 |
大規模施設や工場、ビル全体 |
1,000~3,000万円以上 |
5.省エネ機能とランニングコストの抑制
業務用エアコンの選定時には、初期費用だけでなく、長期的なランニングコストも考慮することが非常に重要です。特に、近年のエネルギー価格の高騰を踏まえると、省エネルギー性能の高い機種を選ぶことは、施設運営におけるコスト削減に大きく貢献します。
最新の業務用エアコンには、様々な省エネ機能が搭載されています。代表的なものとしては、インバーター技術があります。インバーター制御により、エアコンは常に最適な能力で運転することができ、無駄な電力消費を抑えることができます。また、高効率の冷媒を採用することで、より少ないエネルギーで効率的に冷暖房を行うことが可能になっています。
さらに、人感センサーやタイマー機能などを活用することで、必要な時だけ運転し、無駄な運転時間を削減することもできます。
エネルギー効率の高い機器を選ぶことは、ランニングコストを抑えるだけでなく、環境への負荷を軽減することにも繋がります。最新の機種には、従来の機種と比較して大幅に省エネ性能が向上しているものもあり、長期的な視点で見ると、初期費用の差額を上回る節約効果が期待できます。
6.補助金や助成金制度の活用
業務用エアコンのリニューアルを行う際、国や地方自治体が提供する補助金や助成金制度を活用することで、初期投資の負担を軽減できる可能性があります。特に、省エネルギー性能に優れた機器を導入する場合、補助金を利用することで、費用を大幅に削減できる場合があります。
2025年5月現在では、「省エネルギー投資促進支援事業(省エネ補助金)」や「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業 (省CO2型システムへの改修支援事業)」などがあり、東京都や国は、省エネルギー設備の導入を促進するための様々な補助金制度を設けています。
これらの制度は、対象となる機器の種類や性能、申請期間、補助金額などが細かく定められているため、事前にしっかりと調査し、自社のリニューアル計画に合致する制度がないかを確認することが重要です。例えば、東京都環境局のウェブサイトや、経済産業省の関連機関のウェブサイトなどで情報を収集することができます。
補助金や助成金の申請には、一定の条件を満たす必要があり、申請期間も限られている場合があります。そのため、リニューアル計画の初期段階から補助金制度の活用を検討し、早めに情報収集と申請準備を行うことが推奨されます。
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7.まとめ
この記事では、業務用エアコンの購入および設置にかかる費用相場について以下の内容を解説しました。
- 業務用エアコンの種類と施設への適応
- 業務用エアコン購入費用の相場
- 設置工事費用の相場
- 業務用エアコンリニューアルの総費用
- 省エネ機能とランニングコストの抑制
- 補助金や助成金制度の活用
業務用エアコンのリニューアルにかかる費用は、選定するエアコンの種類や性能、設置場所の状況などによって大きく異なります。リニューアルを検討する際には、まず施設の規模や使用目的に最適なエアコンを選び、その上で工事費込みの総額を正確に把握することが大切です。
また、初期費用だけでなく、省エネルギー性能を重視することで、長期的なランニングコストの削減や環境への配慮が可能になります。最新の省エネ技術を活用した機種を選ぶことで、日々の運用コストを抑え、持続可能な施設運営に貢献することができます。
リニューアルを進める際は、必ず複数の専門業者から見積もりを取得し、それぞれの提案内容や費用を比較検討することをおすすめします。専門業者は、施設の状況を詳しく調査した上で、最適な機種選定や工事計画を提案してくれます。また、補助金や助成金制度に関する情報を提供してくれる場合もあります。
業務用エアコンのリニューアルは、施設の快適性を向上させるだけでなく、長期的なコスト削減にも繋がる重要な投資です。本稿で提供した情報を参考に、慎重な計画と適切な業者選定を行い、効率的で効果的なリニューアルを実現してください。
TAKEUCHIでは、施設の快適な環境を維持するために、長期的な視点で空調設備の運用やリニューアルをサポートしております。課題に合った機種の選定や定期的な点検・メンテナンス、リニューアルを通じた空気環境の改善までお任せください。