高効率エアコンで省エネを目指す! 評価指標や導入時に活用できる優遇税制とは
地球温暖化による環境問題への対応が国際的な課題として挙げられるなか、日本政府は2050年カーボンニュートラル(※)や2030年の温室効果ガス46%削減といった目標を掲げています。
▼温室効果ガスの削減目標(2021年10月22日閣議決定)
画像引用元:環境省『地球温暖化対策計画が閣議決定されました』
火力発電をはじめとする“エネルギー起源CO2”のうち、業務部門においては2030年までに51%削減するといった厳しい目標が定められています。
これらの目標を達成するには、温室効果ガスの約9割を占めるCO2を削減する必要があり、そのための重要な取り組みとして“省エネ化”が挙げられます。
特に学校・介護施設・工場・オフィスなどの施設では、冷暖房による快適な施設環境を維持するために、空調の消費電力が増加しやすくなります。施設の省エネ化を推進するには、高効率エアコンの導入・リニューアルを行うことがポイントです。
この記事では、高効率エアコンの概要や省エネ性能を示す評価指標、おすすめの業務用エアコンの機種、活用できる優遇税制について紹介します。
※温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、実質的な排出量を全体としてゼロにすること。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組』/環境省『地球温暖化対策計画が閣議決定されました』
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目次[非表示]
1.高効率エアコン(高効率空調設備)とは
高効率エアコンとは、小さなエネルギーで冷暖房の能力を発揮できる空調設備です。高効率空調設備と呼ばれることもあります。
冷暖房時のエネルギー効率を高めることで消費電力を削減できるため、地球温暖化の原因となるCO2排出量を抑えられます。近年、各メーカーから販売されている高効率エアコンには、以下のような技術・機能が採用されています。
▼高効率エアコンで採用されている技術・機能
技術・機能 |
概要 |
ヒートポンプ |
空気中の熱エネルギーを利用して冷暖房を行う技術 |
インバータ |
圧縮機のモーター回転数を自動制御して、デマンドに応じた負荷で冷暖房を運転する技術 |
人感・温度センサー |
人の動きや室内の温度を検知して、温度や風量・風向の設定を自動で調整する機能 |
AIによる運転制御 |
外気温の変化や人の流れなどを予測して、事前に冷暖房の設定温度や風量を制御する技術 |
なお、ヒートポンプの仕組みについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2.高効率エアコンの省エネ性能を示す評価指標
高効率エアコンの省エネ性能は、COP(Coefficient Of Performance)とAPF(Annual Performance Factor)という2つの指標で評価されます。
2-1.評価指標1|COP
COPは、“エネルギー消費効率(制約係数)”という意味があり、一定の温度条件における消費電力1kW当たりの冷房・暖房能力を表します。
▼COPの計算式
COP(kW)=定格能力(kW)÷冷房・暖房時の定格消費電力(kW)
▼定格能力と定格消費電力とは
概要 |
|
定格能力 |
JIS(日本工業規格)に基づいた温度条件において、連続的に運転した場合に出力できる冷暖房の能力 |
定格消費電力 |
定格能力で冷暖房を運転した際の消費電力 |
算出された数値が高くなるほど、省エネ性能が高いと判断できます。ただし、冷暖・暖房能力は、外気温や室温によって左右されるため、実際の使用中にCOP値と同様の能力が発揮されない可能性も考えられます。
2-2.評価指標2|APF
APFは、“通年エネルギー消費効率”という意味があり、1年を通して一定条件のもとでエアコンを使用した際の消費電力1kWh当たりの冷房・暖房能力を表します。
COPと同様に数値が高いほど省エネ性能に優れています。
▼APFの計算式
APF(kWh)=1年間に必要な冷暖房能力(kWh)÷1年間で消費した冷暖房の電力量(kWh)
特定のポイントで定格能力を測定するCOPとは異なり、JISで定められた環境での年間を通した運転効率を把握することが可能です。建物の用途・負荷状況・外気温なども考慮されるため、より実際の使用環境に近い省エネ性能となります。
2-3.COPとAPFの表示について
業務用エアコンの省エネ性能は、これまでCOPのみが表示されていましたが、2006年からはAPFも表示されるようになりました。近年では、新しい評価基準としてAPFが用いられることが主流となりつつあります。
COPでは、一定の条件で運転した場合にピンポイントでの能力値を測定します。これに対してAPFは、あらゆる使用環境を考慮して1年間を通した総合的な負荷や消費量を測定します。そのため、APFのほうがより実際の使用環境に近い省エネ性能を算出することが可能です。
なお、業務用エアコンのメーカーでは“COPp”“APFp”と表示されることがありますが、この“p”は一次エネルギー換算での表示を意味しています。
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3.省エネ性能に優れた業務用エアコン4選
ここからは、業界トップクラス(※)の省エネ性能を実現している業務用エアコンのおすすめ機種を紹介します。
※JIS B 8616:2015に準拠したAPF値
3-1.ダイキン|FIVE STAR ZEAS
『FIVE STAR ZEAS』は、業務用エアコン“スカイエアシリーズ”のハイグレードモデルです。2008年モデルのインバータ機と比較して、最大約63%の省エネ効果が期待できます。
▼FIVE STAR ZEASの省エネ性能
- 季節ごとに高効率運転を制御して冷媒温度を最適化
- 人検知・床温度センサーによる自動運転で消費電力を削減
- 設定温度に到達したあとの低負荷運転で消費電力の削減
参考:ダイキン『FIVE STAR ZEAS』
3-2.日立|省エネの達人プレミアム
『省エネの達人プレミアム』は、店舗・オフィス用のパッケージエアコンです。天井カセット形の室内機『てんかせ4方向』と組み合わせることで、10年前のインバータ機と比較して消費電力量を約17%低減しています。
▼省エネの達人プレミアムの省エネ性能
- 省エネ法・グリーン購入法の基準値をクリアするAPF値を実現
- 低負荷運転時に圧縮機のON・OFFを抑えて消費電力を約25%低減
- 電流の検知によるデマンドの自動制御で最大電力量を抑制
参考:日立『高い省エネ性と快適性を追求した「省エネの達人プレミアム」「省エネの達人」』
3-3.三菱電機|スリムZR
『スリムZR』は、店舗・オフィス用のパッケージエアコンにおけるハイスペックモデルです。風路の最適化による風速損失の低減とターボファンの改善によって、高い省エネ性を実現しています。
▼スリムZRの省エネ性能
- 省エネ法基準値を上回るAPF値を実現(※)
- 運転データや使用環境を学習した先読み運転で過剰な冷暖房を防止
※4方向天井カセット型
参考:三菱電機『スリムZR』
3-4.Panasonic|XEPHY Premium
『XEPHY Premium』は、店舗・オフィス向けのハイグレードエアコンです。筐体や各要素技術を最適化することで、省エネ法基準値を上回る高いAPF値を実現しています。
▼XEPHY Premiumの省エネ性能
- R32の冷媒特性に合わせた冷媒流路で熱伝導率を向上
- 圧縮機の動きを滑らかにする技術により変換ロスを低減
- 人感・床温・湿度センサーによる運転制御で節電性を向上
なお、エアコンのリニューアルに活用できる補助金についてはこちらの資料をご確認ください。
参考:Panasonic『XEPHY Premium』
4.高効率エアコンの導入時に活用できる優遇税制
施設に高効率エアコンを導入する際には、税金の優遇制度を利用できる可能性があります。
4-1.中小企業経営強化税制A類型
中小企業経営強化税制は、経営力の向上を目指す中小事業者に対して、即時償却または取得価額の10%の税額控除の選択適用を受けられる制度です。A類型では、生産性を向上させる設備の導入が対象となります。
▼中小企業経営強化税制A類型の概要
項目 |
概要 |
対象法人 |
青色申告書を提出する中小事業者のうち、経営力向上計画の認定を受けた特定事業者 |
要件 |
経営力向上計画に基づいて、生産性が旧モデル比平均で1%以上向上する設備を新規取得する |
対象設備 |
1.機械装置(160万円以上)
2.工具(30万円以上)
3.器具備品(30万円以上)
4.建物附属設備(60万円以上)
5.ソフトウェア(70万円以上)
|
税制措置 |
以下の措置を選択適用
1.即時償却
2.取得価額10%(※)の法人税・所得税の控除
|
高効率エアコンは、対象となる設備のうち“建物附属設備”に該当します。制度の適用を受けるには、設備の導入前に工業会証明書を取得して経営力向上計画の認定を受ける必要があります。
※資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%
出典:中小企業庁『中小企業経営強化税制』『中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き』
4-2.先端設備等導入計画による税制支援
先端設備等導入計画の税制支援は、中小企業者が労働生産性の向上を図るための設備投資を行った際に、固定資産税の課税標準が軽減される措置です。
▼先端設備等導入計画による税制支援の概要
項目 |
概要 |
対象法人 |
中小事業者 |
要件 |
年平均の投資利益率が5%以上になると見込まれる一定の設備(※)を新規取得する |
対象設備 |
1.機械装置(160万円以上)
2.工具(30万円以上)
3.器具備品(30万円以上)
4.建物附属設備(60万円以上)
|
税制措置 |
取得設備にかかる固定資産税の課税標準を3年間で2分の1に軽減 |
税制措置の適用を受けるには、市区町村の導入促進基本計画に基づいて“先端設備等導入計画”を策定して認定を受ける必要があります。
※認定経営革新等支援機関の確認を受けた投資計画に記載された投資目的の達成に必要不可欠な設備。
出典:中小企業庁『先端設備等導入計画策定の手引き』
5.まとめ
この記事では、高効率エアコンについて以下の内容を解説しました。
- 高効率エアコンの概要
- 省エネ性能を示す評価指標
- 省エネ性能に優れた業務用エアコン
- 高効率エアコンの導入時に活用できる優遇税制
環境問題への対応が求められる今、高効率エアコンは施設の省エネ化を推進するうえで重要な設備の一つといえます。近年、各メーカーから販売されている高効率エアコンは、JISが定めた2015年の規格を上回るAPF値を実現しており、ほかにも省エネを実現するための新技術の導入や構造のリニューアルが行われています。
新たに高効率エアコンの導入を検討している方は、税制の優遇措置について適用を受けられる可能性があるため、要件を確認しておくことがポイントです。
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詳しくは、こちらの資料をご確認ください。
業務用エアコンの導入・リニューアルに活用できる補助金は、こちらの資料にまとめています。
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