工場における空調設備の課題。稼働効率を高めてコスト削減につなげるポイント
工場では、安全かつ労働者が働きやすい快適な作業環境を維持するための空調設備が欠かせません。
しかし、工場は一般の住居施設やオフィスビルなどとは異なり、24時間体制で稼働したり、製品に応じた温度管理を行ったりする必要があり、空調管理に関してさまざまな課題があります。
工場の施設管理者のなかには、「工場の空調管理を行ううえで課題となる点は何か」「空調設備を効率的に運用する方法はあるか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、工場における空調設備の役割や課題、稼働効率を高めてコスト削減につなげるポイントについて解説します。
なお、学校や介護施設、病院の空調設備についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
学校における空調の設置状況と必要性。新設やリニューアルを行う際の課題とは
介護施設は空調管理が重要! 入居者の生活環境を改善するためのリニューアルポイント
病院の空調設備に求められる4つの要素。 リニューアルを行う際の注意事項とは
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工場における空調設備の役割
工場に設置する空調設備は、大きく分けて3つの役割を担います。
▼工場における空調の役割
- 従業員の健康管理
- 製造設備の負荷軽減
- 製品の品質保持
空調によって工場内の温度・湿度が快適に保たれていると、熱中症をはじめとした従業員の健康リスクを軽減できます。従業員が一年を通して快適に働ける環境は、作業の効率化や体調不良の防止につながり、生産性の向上も期待できます。
また、製造現場では、人体にとって有害性のある化学物質の使用や粉じん作業などが行われる場合があります。作業場の安全な空気環境を確保するためにも、空調設備による換気や空気洗浄などが必要です。
さらに、工場内の温度が高すぎたり低すぎたりすると、工場設備への過剰な負荷や製品の変化・変形につながる可能性も考えられます。空調によって施設内の温度・湿度をコントロールすることで、製造設備のオーバーヒートによる動作不良を防止できるほか、製品の品質保持につながります。
工場でよくある空調設備の課題
工場で空調設備を運用する際によくある課題として、以下が挙げられます。
▼工場における空調の課題
- 工場内が高温・高湿になりやすい
- 電気代が高くなりやすい など
工場では、熱や蒸気を発するさまざまな製造機器が稼働している場合があり、施設内が高温・高湿になりやすい環境です。
断熱性能が低い建物の場合には、日射によって熱が室内に伝わりやすくなり、冷房が効きにくくなります。特に夏場は外気温が上昇して室外機も高温になりやすいため、冷房の効きが悪くなることもあります。
また、24時間稼働している工場では、空調設備も常時運転することになり、電気代の増加につながります。電力を用いる設備の多い工場においては、空調設備も含めたピーク電力が大きくなり、電気代の基本料金が高くなるケースも見られます。
空調設備の稼働効率を高めてコスト削減につなげるポイント
工場の快適な作業環境と省エネを実現するには、断熱性の向上と作業現場に合わせた空調方式を選ぶことが重要です。空調設備のリニューアルを行う際に押さえておくポイントには、以下が挙げられます。
①工場の断熱化を行う
工場では、住宅のような断熱性能が十分に備わっていないケースがあります。
床や壁、天井、窓などの断熱化を行うことで、外気の暑さ・寒さの影響を受けにくくなり、冷暖房効率を高められます。冷暖房効率がよくなると、空調設備の電気代を抑えられるほか、作業場の快適な温度を維持できるようになります。
▼工場の断熱化を図る方法
- 床・壁・天井などへの断熱材の施工を行う
- 窓に断熱フィルムを貼る
- 複層ガラスや樹脂窓を導入する
- 外壁に遮熱シートの施工や断熱塗装を行う など
②工場に合った空調方式を選択する
空調設備による消費電力を抑えるには、工場の稼働体制や作業環境などに合った空調方式を選択することがポイントです。
▼工場で用いられる空調方式
空調方式 |
仕組み |
全体空調方式 |
工場全体を一つの空調システムで一元管理して、温度・湿度の制御を行う |
部分空調方式 |
特定のエリアごとに独立した空調システムを設置して、個別に温度・湿度調整を行う |
ゾーン空調方式 |
複数のエリアを一つの空調システムで管理して、区域ごとに温度・湿度調整を行う |
スポット空調方式 |
特定の作業場や機器など、冷暖房が必要な場所だけに空調設備を設置する |
工場全体で均一な温度・湿度を保ちたい場合には、全体空調方式が適しています。
また、空調が必要な作業場・区域ごとにオンオフの切り替えや温度管理を行いたい場合には、部分空調またはゾーン空調が適しています。高熱を発する作業場では、スポット空調を組み合わせて効率的に冷房の運転を行うことも有効です。
③エネルギー使用状況に応じてEHP・GHPを選ぶ
EHPとGHPは、空気中の熱エネルギーを移動させることで冷暖房を行う“ヒートポンプ式”による空調設備の一種です。冷暖房の動力源に電気またはガスを用いているかによって分類されています。
▼EHPとGHPの動力源
EHP |
GHP |
電気 |
ガス |
製造設備の稼働によって電気をよく使う工場であれば、ガスを使用するGHPにしたほうが消費電力のピークカットができます。反対にガスをよく使う工場の場合には、電気を使用するEHPを導入することが有効です。
▼TAKEUCHIで行ったGHPへの空調リニューアルの事例
TAKEUCHIでは、綿密なヒアリングを基にGHPへの空調リニューアルを実施しました。業務や生産を止めずに、夏場の光熱費を約31%削減することに成功しました。
なお、GHPとEHPの違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
空調設備の新設・リニューアルには補助金を活用できる
工場に空調設備を新たに導入したり、リニューアルを実施したりする際には、補助金を活用できる場合があります。
2023年度補正予算による『省エネ支援策パッケージ』では、“設備単位型”の類型において高効率空調が対象とされています。
▼省エネ支援策パッケージ(設備単位型)の概要
項目 |
補助内容 |
主な要件 |
1.事前に設定したエネルギー消費効率の基準を満たすこと
2.補助対象設備をリストから選択して導入すること(高効率空調・業務用給湯器・産業用モータ など)
|
補助率 |
3分の1 |
補助額 |
上限1億円、下限30万円 |
経済産業省『令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ』を基に作成
なお、空調設備の導入やリニューアルに活用できる補助金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
出典:経済産業省『令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ』
まとめ
この記事では、工場の空調設備について以下の内容を解説しました。
- 工場における空調設備の役割
- 工場でよくある空調設備の課題
- 空調設備の稼働を効率化してコスト削減につなげるポイント
- 空調設備の新設・リニューアルに活用できる補助金
工場では、従業員の健康管理や製造設備の負荷軽減、製品の品質保持などのために、空調設備で室内の温度・湿度と空気環境を管理することが求められます。
空調稼働の稼働効率を高めてコストの削減を図るには、工場の断熱化を行うとともに、環境に適した空調方式を選定すること、エネルギー使用状況に応じてEHP・GHPを導入することがポイントです。
TAKEUCHIでは、工場における快適で安全な空気環境づくりをサポートしております。最新の分析技術で空気の流れを可視化して、利用環境に合わせた空調をプランニングいたします。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。