
体育館に空調を設置した事例4選。導入状況や設置の必要性について
学校施設においては、生徒の健康維持や授業計画の円滑な進行のために空調設備の活用が重要です。近年では空調設備の導入も進み、小中学校や高等学校におけるほぼすべての普通教室に設置されています。
学校施設のなかで現在でも空調設備の導入率が低い場所としては、体育館が挙げられます。しかし、体育館への空調設置は利用する生徒の健康だけでなく、防災の観点からも重要な取り組みです。
この記事では、体育館における空調設備について、設置状況や必要な理由、設置事例を解説します。
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目次[非表示]
1.学校体育館における空調設備の設置状況
文部科学省の『公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況について』によると、2024年9月時点での全国の小中学校や高等学校における体育館への空調設備の設置率は、いずれも20%以下の低い水準となっています。
▼体育館における空調設備の設置状況
学種 |
体育館の保有数 |
空調設置済みの数 |
設置率 |
小学校 |
18,612 |
3,353 |
18.0% |
中学校 |
14,004 |
2,797 |
20.0% |
高等学校 |
10,246 |
1,435 |
14.0% |
文部科学省『公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況について』を基に作成
学校体育館への空調設置が進まない主な原因としては、設置工事や維持管理のコストが高額になりやすいことが挙げられます。
出典:文部科学省『公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況について』
2.体育館に空調設備の設置が必要とされる理由
体育館に空調設備の設置が必要とされる理由には、健康維持と災害対策の2つの視点があります。
▼体育館に空調設備の設置が必要な理由
- 運動中における熱中症リスクが高まっている
- 災害時の避難所としての環境整備を行う必要がある
日本の年間平均気温は年々上昇傾向にあり、熱中症のリスクが高まっています。運動中は特に熱中症が生じやすいため、運動場所として用いる体育館には空調設備の設置による対策が求められます。
また、体育館は災害時に避難所としても利用されるケースがあります。避難生活において被災者の心身の健康を守るためには、空調設備を体育館に設置して、可能な限り快適で衛生的な環境を維持することが重要です。
なお、体育館に設置する空調の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「空調設備導入に活用できる補助金と申請ステップを紹介」
3.体育館における空調設置の事例4選
ここでは、体育館における空調設置の事例を4つ紹介します。
3-1.GHPを導入した事例(学校法人成城学校様)
学校法人成城学校様では、生徒と職員の健康を守る目的で体育館にGHPエアコンを導入しました。
▼工事内容
電気料金を抑えるために必要なキュービクルの増設が難しかったため、電力消費量の少ないGHPを採用しました。また、東京都の補助金を活用して導入コストも抑えています。
施工は夏休みに実施して、授業や部活動への影響を最小限に抑えました。さらに、室内機にアルミ製の防球ガードも設置することで、生徒が運動しやすい環境を維持しています。
▼工事後の効果
空調によって快適な温度を維持することで、生徒が夏場でも安心して部活動に打ち込めるようになりました。また、災害時における指定避難所として、地域への貢献にもつながっています。
3-2.EHPを導入した事例(横浜創学館高等学校様)
横浜創学館高等学校様では、夏場の部活動における熱中症を避けるためにEHPエアコンを体育館に導入しました。
▼工事内容
空調のエネルギーについて検討を行ったうえで、改修したばかりの受変電設備を活用できるEHPエアコンを導入しました。
また、冷房で室温を速やかに下げられるようにするために、設置前にシミュレーションを行って空気の流れを確認しています。
▼工事後の効果
適切な熱源を検討したことで、イニシャルコストを27%抑えられました。さらに、猛暑日でも冷房運転開始から15分で25℃まで室温を下げられるようになったことで、部活動時の熱中症リスクも軽減しています。
なお、空調の設置に活用できる気流シミュレーションについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
3-3.断熱性の向上と併せて空調設備を設置した事例
内閣府防災情報からの事例です。東京都日野市では、断熱改修工事と併せて市内中学校の体育館に空調設備を設置しました。
▼工事内容
ガス式マルチパッケージ型の空調設備を導入すると同時に、カバー工法(※)によって体育館自体の断熱性能の向上を図りました。
また、工事においては文部科学省による学校施設環境改善交付金を活用しています。
▼工事後の効果
体育館は、建物自体の断熱性が低いことで空調が効きにくくなるケースがあります。空調の設置と断熱改修工事を併せて行うことで、空調設備を効率的に運用できる環境を整備しています。
※カバー工法とは、既存の屋根の瓦棒の間に断熱材を敷いて、その上に防水シートを被せて断熱性と防水性を確保する方法です。
出典:内閣府防災情報のページ『学校体育館の空調設備の導入に活用可能な国の支援制度について、ご案内いたします。』
3-4.指定避難所に空調設備を設置した事例
こちらも内閣府防災情報からの事例です。大阪府箕面市では、緊急時の指定避難場所となっている小・中学校20校の体育館に空調設備を導入しました。
▼工事内容
緊急防災・減災事業債を活用して、災害時にも早期に供給できるLPガスに対応したGHPエアコンと発電機を導入しました。
また、空調効果を向上させるために送風機も導入し、エアコンと一体化させて配置しています。
▼工事後の効果
災害時に空調を使用するには、空調の動力を確保することが欠かせません。災害による停電も見越した設備を導入することで、避難所としての体育館の空調環境を安定して維持できる環境を構築しています。
なお、災害に備えた学校体育館の設備についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:内閣府防災情報のページ『学校体育館の空調設備の導入に活用可能な国の支援制度について、ご案内いたします。』
4.まとめ
この記事では、体育館への空調の設置について以下の内容を解説しました。
- 学校体育館における空調設備の設置状況
- 体育館に空調設備の設置が必要とされる理由
- 体育館における空調設置の事例4選
学校体育館には、空調設備の設置が普通教室ほど進んでいません。しかし、熱中症のリスクが年々高まっていることから、生徒の健康維持のためには空調設備の設置が求められます。
また、学校体育館は災害時の避難所としても利用されるため、被災者の心身の健康を守るためにも空調設備を設置することは重要です。
TAKEUCHIでは、学校・介護施設・工場・オフィスなどにおいて空調設備のリニューアルをトータルサポートしています。丁寧なヒアリングと現地調査を踏まえて、施設の課題に応じた解決策をご提案いたします。