
業務用エアコンの暖房効率を高める5つのポイントと省エネにつながった事例3選
医療・福祉施設、教育機関、工場、オフィスなどの施設では、空調設備がエネルギー消費の大きな割合を占めています。そのため、空調の運用効率が光熱費や運営コストに影響を与えるケースも少なくありません。
「光熱費が年々増えている」「室内の寒暖差が大きく、快適性に課題がある」「設備が古く、暖房効率が悪いような気がする」など、お悩みを抱えている施設管理者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、暖房効率の改善が運営コスト削減と快適な室内環境の両立につながる理由をはじめ、施設規模や用途に適した業務用空調の選び方、すぐに取り組める改善ポイント、実際に省エネ効果が出た事例を解説します。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」
目次[非表示]
1.暖房効率の改善は運営コスト削減と室内環境向上の両立につながる
暖房・空調設備は、施設全体のエネルギー消費の中でも特に比率が高く、効率改善の影響がそのまま光熱費に反映されやすい設備です。そのため、暖房効率を見直すことは、短期的にも中長期的にも運営コスト削減が期待できます。
▼オフィスビルの電力消費の内訳

画像引用元:経済産業省 資源エネルギー庁『冬季の省エネ・節電メニュー』
また、暖房効率が低い状態では、設定温度を必要以上に上げなければ寒さを感じやすくなり、結果としてエネルギー消費が増加します。一方で、空調の効率を高めれば、設定温度を過度に上げなくても同等、またはそれ以上の快適性を確保できます。
さらに、業務用施設で多く見られる課題が「室温ムラ」です。天井高のある建物や広い空間では、暖気が上部に滞留し、足元が寒くなりがちです。
暖房効率の改善は、こうした温度ムラの解消にもつながり、利用者・従業員双方にとって快適な室内環境の維持に貢献します。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『冬季の省エネ・節電メニュー』
2.業務用エアコンの種類と特徴
暖房効率を高めるためには、施設に適した暖房方式を選定することが重要です。暖房効率は、空調機器単体の性能だけで決まるものではなく、建物条件や運用環境との適合性によって大きく左右されます。
▼業務用エアコンの種類
方式 | 特徴 | 向いている施設 |
EHP(電気ヒートポンプ) | 初期費用が比較的抑えやすい。メンテナンスがしやすい | オフィスビルや教育施設、小〜中規模施設など |
GHP(ガスヒートポンプ) | 暖房の能力が高い。電力使用量を抑えられる | 病院や介護施設、工場、体育館など |
ハイブリッド方式 | 高効率な運転を実現。電力のピークカットができる | 病院や介護施設、年間の稼働が必要な施設、BCP対策を重視する施設など |
運転時間の長い施設では、選定の違いが中長期的に大きなコスト差として現れやすくなります。そのため、業務用エアコンの選定では、施設全体の運用条件を踏まえた「全体最適」の視点が欠かせません。
GHPとEHPについてはこちらの資料で詳しく説明しています。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「GHP・EHP徹底比較 長期的視点での空調機器選びのポイント」
3.暖房効率を高める5つのポイント
運転管理の見直しや空気循環、日常的なメンテナンスなど、運用面の工夫だけでも省エネ効果が期待できる施策は多くあります。ここでは、暖房効率を高める5つのポイントを紹介します。
3-1.設定温度・運転時間を利用実態に合わせて最適化する
1つ目は、設定温度や運転時間を施設の利用実態に合わせて最適化することです。多くの施設では、エリアや時間帯に関係なく、一律の設定温度・運転スケジュールで空調を稼働させているケースが見られます。
例えば、夜間や早朝、人の少ないバックヤードや会議室でも日中と同じ条件で運転していると、不要なエネルギー消費が積み重なります。このような運転は、快適性に寄与しない一方で、光熱費の増加を招く要因になります。
エリアごとの利用人数や稼働時間を整理し、部分運転やタイマー制御を活用することで、必要な場所に必要な分だけ暖房を行うことが可能です。
3-2.空気を循環させ温度ムラを抑える
2つ目は、空気を循環させ、温度ムラを抑えることです。
天井が高い建物や広いワンフロア空間では、暖気が天井付近に滞留し、足元が冷えやすくなります。この状態では、設定温度を上げても体感温度が改善されにくく、結果として暖房効率が低下します。エネルギーを使っているにもかかわらず、十分な暖かさを感じられない状況です。
送風制御やサーキュレーターを活用し、上下・水平方向の空気循環を促すことで、室内の温度ムラを抑えることができます。
3-3.窓・出入口からの熱損失を抑える
3つ目は、窓・出入口からの熱損失を抑えることです。
すき間風や頻繁な開閉によって暖気が逃げると、空調負荷が増加し、効率の悪い運転状態になります。特に利用者の往来が多い施設では、出入口付近の温度低下が全体の快適性に影響を及ぼすこともあります。その結果、室内を暖めようとして設定温度を高めに設定してしまい、エネルギー消費が増加します。
出入口へのカーテンや間仕切りの設置、風除室の導入などは、比較的少ない投資で実施できる対策です。
3-4.フィルター清掃・点検で暖房性能の低下を防ぐ
4つ目は、フィルター清掃・点検を定期的に行うことです。
フィルターの汚れや目詰まりは風量低下を招き、空調機器本来の暖房性能を発揮できなくなります。その結果、設定温度を上げても室内が暖まりにくくなり、無駄なエネルギー消費につながります。
効率低下の原因が設備の故障ではなく、メンテナンス不足であるケースも少なくありません。定期的なフィルター清掃や点検を行うことで、暖房効率の低下を防ぐことができます。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「設備管理者が知っておきたい法定点検の基本知識」
3-5.省エネ性能の高い機器に変更する
5つ目は、空調設備の更新です。空調設備の老朽化は、暖房効率低下の大きな要因の一つです。
10年以上使用している業務用空調設備では、最新機種と比べてエネルギー効率に大きな差が生じていることがあります。そのまま使い続けることで、光熱費がかさみ続ける可能性もあります。
最新の業務用空調機器は、省エネ性能に加え、部分運転や負荷調整がしやすい制御機能を備えています。施設全体の運用を見据えた更新を行うことで、暖房効率の改善と運営コスト削減を同時に実現できます。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」
4.空調効率を高めることで省エネにつながった事例
ここでは、TAKEUCHIのサービスをとおして、空調更新や換気設備の導入に取り組み、空調効率を高めた事例を3つ紹介します。
4-1.事例1|学校法人立教学院 立教大学池袋キャンパス メイザーライブラリー

学校法人立教学院 立教大学池袋キャンパスのメイザーライブラリーでは、図書館収蔵庫における24時間稼働の空調管理とランニングコスト削減を両立するため、ハイブリッド空調システムを導入しました。
▼工事前の課題
図書館収蔵庫では、貴重な資料を保管していることから、年間をとおして一定の温湿度を維持する24時間365日の空調管理が求められていました。
一方で、リニューアルを機に、長時間運転によるランニングコストの低減も重要な課題となっていました。
▼工事内容
ガス(GHP)と電気(EHP)を組み合わせたハイブリッド空調『スマートマルチ』を導入。外気温や昼夜の寒暖差に応じてエネルギーを使い分けることで、空調負荷を抑えた効率的な運転を実現しています。
併せて、クラウド制御サービス『エネシンフォ』を導入し、過去の運転データや外気温予測、ガス・電気料金の比較データを基に、AIによる自動制御運転を実現しました。
▼工事後の効果
スマートマルチの導入により、使用エネルギー量を約8%削減。24時間稼働が必要な収蔵庫においても、省エネ運用が可能となりました。
また、自動制御によって日常的な手動管理が不要となり、空調管理にかかる人的負担や管理コストの低減にもつながっています。
4-2.事例2|学校法人佐々木学園 東京総合美容専門学校

東京総合美容学校では、老朽化した空調設備によるトラブルと、ビル全体の電気容量不足を解消するため、空調設備のリニューアルを実施しました。
▼工事前の課題
既存の空調設備は老朽化が進み、故障による想定外の修繕コストが発生していました。また、ビル全体の電気容量が不足しており、授業に必要なドライヤー用コンセントなどの設備増設ができないことも課題となっていました。
▼工事内容
EHPから、ビル全体の消費電力を抑えられるGHPへ更新しています。併せて、新たに必要となるガス配管は最短ルートで設計し、導入コストを抑えています。
工事は夏休み期間中に実施し、授業や職員の方々への影響が出ないよう、スケジュール調整を行いました。
▼工事後の効果
空調リニューアルにより、ビル全体の消費電力を約40%削減しています。その結果、電気容量に余裕が生まれ、授業用設備の増設が可能となりました。
また、冷暖房の効きも改善され、生徒や教職員の方々からも満足の声が寄せられています。
4-3.事例3|医療法人南陽会 田村病院

田村病院では、空調設備の老朽化による故障頻発やエネルギー消費の課題、院内の湿気問題を解消するため、空調設備のリニューアルと併せて環境改善工事を実施しました。
▼工事前の課題
既存のGHPでは故障が頻発しており、部屋ごとに運転時間が異なることから、空調設備の老朽化状況にもばらつきが生じていました。
また、沿岸地域に立地している影響で特定の部屋では湿気が多く、内装にカビなどの汚れが目立つ状況となっていました。
▼工事内容
沿岸地域の環境を考慮し、耐重塩害仕様の空調機器を採用しています。老朽化した空調設備の更新に合わせて、24時間稼働が必要なナースステーションには単独系統のエアコンを導入し、冷房効率とエネルギー消費の最適化を図っています。
また、各階に集中リモコンを設置することで、消し忘れによる無駄な運転を防止しました。さらに、湿気対策として業務用除湿機と天井内換気設備を導入し、室温・湿度の測定結果を基に、換気扇の設置位置や機器選定を行いました。
▼工事後の効果
空調設備のリニューアルにより、年間のエネルギー消費量を約15%削減しました。内装の壁や天井も一新したことで、院内の印象が明るくなり、長年の課題であった湿気問題も改善されています。その結果、院内環境が向上し、職員の方々からも働きやすくなったとの声が寄せられています。
5.業務用エアコンのリニューアル・設備導入の費用目安
業務用エアコンのリニューアルの費用は、施設規模や更新範囲によって大きく異なりますが、機器本体+工事費用で数十万〜数百万円となるケースが一般的です。
費用には、空調機器本体だけでなく、制御システムの更新、配管・電源工事、既存設備の撤去工事などが含まれる場合があります。
一方で、運用コスト削減効果を踏まえると、長期的には投資回収が見込めるケースも多く、単純な初期費用だけで判断しないことが重要です。
なお、工事を依頼する際の流れや相場についてはこちらの記事をご確認ください。
6.まとめ
この記事では、暖房効率について以下の内容を解説しました。
暖房効率の改善は運営コスト削減と室内環境向上の両立につながる
業務用エアコンの種類と特徴
暖房効率を高める5つのポイント
空調効率を高めることで省エネにつながった事例
業務用エアコンのリニューアル・設備導入の費用目安
暖房効率の改善は、光熱費削減だけでなく、利用者・従業員にとって快適な室内環境づくりにも直結します。特に、業務用空調の設置・リニューアルを検討している施設管理者にとっては、今後の運営コストを左右する重要な判断ポイントです。
「自施設に最適な空調方式を知りたい」「省エネ効果を最大化したい」と考えている方は、ぜひTAKEUCHIにおまかせください。
TAKEUCHIでは、工場やオフィス、学校、介護施設などの施設における空調設備のリニューアルをトータルサポートしております。建物の省エネやZEBの達成を目指した空調設計をご提案いたします。






