
オフィスの換気を行う意味は? 快適な空間を実現する換気方法と注意点
オフィスの換気を行う意味は? 快適な空間を実現する換気方法と注意点
近年、オフィスにおける換気の重要性がますます高まっています。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの企業がその必要性を再認識しましたが、換気の目的は単なる感染症対策だけではありません。従業員が健康で快適に働ける環境は、企業の生産性を左右する重要な要素です。
この記事では、企業が換気を行う法的責任から、適切な換気量の目安、そして効果的な換気方法とその注意点までを詳しく解説します。
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目次[非表示]
1.換気がもたらすメリット
コロナ禍以降、換気は「感染症対策」という喫緊の課題への対応としてだけでなく、従業員の健康維持と生産性向上という、より本質的な観点からも注目されています。
換気は空気中に漂うウイルスや細菌の濃度を抑制するため、インフルエンザや風邪、新型コロナウイルスなどの感染症予防につながります。
また、換気は室内の二酸化炭素(CO2)濃度を抑制するうえで必要です。人が呼吸することでCO2濃度は上昇し、濃度が高くなると、従業員は集中力の低下や頭痛、めまいといった体調不良を感じやすくなります。
厚生労働省は、空気調和設備を設けている場合の空気環境の基準として、適切なCO2含有率は“1,000ppm以下”と定めています。
適切な換気によりCO2濃度を低く保つことで、従業員の集中力維持と体調不良の予防が期待できます。
出典:厚生労働省『建築物環境衛生管理基準について』
2.換気に取り組む企業の責任
従業員が働くオフィス空間について、事業主には労働衛生基準や建築基準法、そして特定の規模の建物には建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)などに基づき、適切な換気環境を確保する法的義務があります。
▼建築基準法 第28条第2項・第3項
第二十八条
2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
3 別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『建築基準法』
また、事務所衛生基準規則では、一般的なオフィス環境においても、快適で健康的な職場環境の形成が求められています。
▼事務所衛生基準規則 第3条
第三条 事業者は、室においては、窓その他の開口部の直接外気に向つて開放することができる部分の面積が、常時床面積の二十分の一以上になるようにしなければならない。ただし、換気が十分に行なわれる性能を有する設備を設けたときは、この限りでない。
2 事業者は、室における一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率(一気圧、温度二十五度とした場合の空気中に占める当該ガスの容積の割合をいう。以下同じ。)を、それぞれ百万分の五十以下及び百万分の五千以下としなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『事務所衛生基準規則』
出典:e-Gov法令検索『建築基準法』『事務所衛生基準規則』
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3.オフィスで必要とされる換気量の目安
オフィスで確保すべき換気量には、建築基準法などの法令に基づく明確な基準があります。建築物衛生法では、居室に必要な換気量について定めています。
厚生労働省が発表した『「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法』から、特定建築物に該当しない商業施設等においても、「建築物衛生法の考え方に基づく必要換気量(一人あたり毎時30㎥)が確保できていることを確認すること」とされています。
画像引用元:厚生労働省『「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法』
この基準は、人が活動する上で発生する二酸化炭素の濃度を健康に影響のないレベルに保つことを主な目的としています。
具体的には、『建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令』の第2条で定められている「室内の二酸化炭素濃度が1,000ppm(Parts Per Million)以下」に維持されることが、空気環境管理の目安となります。
出典:厚生労働省『「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法』/e-Gov法令検索『建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令』
4.効果的なオフィスの換気方法とポイント
オフィスでの換気は、自然換気と機械換気の2種類に分けられますが、現代のオフィスビルでは、外部環境に左右されず、換気量を安定的に確保できる“機械換気”が主流です。なかでも注目したいのは、“全熱交換器”です。
全熱交換器は、排気する空気から熱と湿度を回収し、取り入れる外気に移すことで、室温・湿度の快適性を保ちながら効率的に換気できる設備です。換気のために窓を開けると冷暖房効率が落ちやすい一方、全熱交換器なら冷暖房負荷の増加を抑えやすく、快適性と省エネを両立しやすくなります。
具体的には、次のような点がメリットです。
室温・湿度が崩れにくく、快適性を保ちやすい
冷暖房負荷を抑えやすく、省エネにつながる
高気密・高断熱化が進んだビルでも、法令の換気基準を満たしやすい
一方で、一般的な業務用エアコンは室内空気を循環させる機能が中心で、外気を取り入れる換気機能は基本的に備わっていません。そのため、換気はエアコン任せにせず、全熱交換器や換気扇などの換気設備を別途稼働させる必要があります。
運用のポイントは、空気をただかき混ぜるのではなく、外気を取り入れる給気と汚れた空気を排出する排気のルートを確実に成立させることです。
また、一定規模以上のオフィスビルでは全熱交換器がすでに設置されているケースも多く、新規導入だけでなく更新(リニューアル)も選択肢の一つです。設備が古いと、熱交換効率や制御性能の低下によりロスが生じ、換気量の安定確保や省エネ面で課題が出ることがあります。更新時に性能や運用を見直すことで、次の改善を同時に狙いやすくなります。
設備点検の基礎知識を改めて確認したい場合は、こちらのチェックリストをお役立てください。
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5.換気を行う際の注意点
効果的な換気を行うためには、単に空気の入れ替えを行うだけでなく、その際に発生し得るデメリットを最小限に抑えるための配慮が必要です。
5-1.室温・湿度の管理と省エネへの配慮
換気、特に自然換気や外気導入量が多い機械換気を行うと、外気の温度や湿度の影響を直接受け、室温・湿度が大きく変動しがちです。これにより、快適性が損なわれたり、快適な状態に戻すために冷暖房のエネルギー消費が増加したりする可能性があります。
この課題を解決し、快適性と省エネを両立させるために有効なのが、全熱交換器の導入です。全熱交換器は、排気する空気から熱(温度)だけでなく、湿気(湿度)も回収し、それらを給気する外気に移して室内へ戻します。これにより、外気を取り入れながらも、室内の温度・湿度の変動を抑え、冷暖房の負荷の軽減が期待できます。
5-2.フィルターや設備の定期的なメンテナンス
換気設備や空調機器のフィルターや熱交換器などは、運転を続けるうちに塵やホコリ、花粉などで汚れていきます。
これらの汚れが蓄積すると、空気の通り道が狭くなり、換気効率が著しく低下してしまいます。十分な換気量が確保できず、結果として空気質の悪化を招きます。
また、汚れた設備は異臭の原因となり、機器の故障を引き起こすリスクも高まります。フィルター清掃をすることで換気効率の低下を防ぎ、結果として設備のランニングコスト(電気代など)の削減にもつながります。
6.まとめ
この記事では、企業が換気を行う意味について、以下の内容を解説しました。
換気がもたらすメリット
換気に取り組む企業の責任
オフィスで必要とされる換気量の目安
効果的なオフィスの換気方法とポイント
換気を行う際の注意点
オフィスの換気は、単なる感染症対策ではなく、従業員の健康維持と業務の生産性向上、そして法令遵守という、企業の持続的な発展に不可欠な要素です。
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