暖房の設定温度による電気料金の節約法。効率的な業務用エアコンの使用方法とは
冬季になると、学校・介護施設・工場・オフィスなどにおいて暖房や給湯による電力消費量が増えやすくなります。
なかでも1日における空調の消費電力は、オフィスビルや医療機関などで3割程度を占めています。電気料金を節約するには、施設内の快適性を維持したうえで暖房使用時の節電対策に取り組むことが重要です。
暖房の節電対策として挙げられるのが、“温度設定の見直し”です。施設管理者のなかには「設定温度と節電にどのような関係性があるのか」「効率的に暖房運転を行う方法はないか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、暖房の設定温度で電気料金を節約できる理由や推奨される温度、効率的に暖房運転を行う方法について解説します。
目次[非表示]
暖房の設定温度で電気料金を節約できる理由
暖房の設定温度を下げると、電力消費量を削減して電気料金を節約することが可能です。
業務用エアコンで暖房を使用する際には、室外機から外気を取り込み、空気中の熱を運ぶ“冷媒”と呼ばれるガスを圧縮させることで室内機へと温風を送ります。この際、外気温と設定温度の差が大きくなるほど、部屋を温めるのにより多くの熱を運ぶ必要があるため、圧縮機に負荷がかかり電力消費量が増えてしまいます。
暖房の設定温度を下げることで、圧縮機の稼働負荷が緩やかになり電力消費量を抑えられます。
▼暖房の設定温度を22℃から20℃に下げた場合の節電効果(※)
施設 |
建物全体に対する節電効果 |
オフィスビル |
3.4% |
学校 |
4.1% |
工場 |
14% |
経済産業省 資源エネルギー庁『冬季の省エネ・節電メニュー』を基に作成
※本州・四国・九州の地域における節電効果
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『冬季の省エネ・節電メニュー』
節電につながる暖房の設定温度
環境省の『エアコンの使い方について』によると、快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すためのエアコンの使い方として、冬季の室温を20℃にすることを推奨しています。
ただし、暖房の設定温度と室温は必ずしも一致しません。例えば、天井の室外機にあるセンサーで室温を検知して設定温度を調整する業務用エアコンでは、天井付近と床付近で室温の差が生じてしまうことがあります。
設定温度を下げつつ暖かく快適な室内環境を維持するためには、以下の方法を取り入れることがポイントです。
▼設定温度を下げつつ快適な室内環境をつくる方法
- サーキュレーターを使用して上部に溜りやすい暖かい空気を循環させる
- 加湿器を併用して室内の湿度を上げる
暖房時に室内の空気を循環させると部屋全体を均一に暖められるようになり、足元の冷えを防止できます。
また、部屋の湿度は体感温度に影響します。室温が同じ20℃の場合、湿度が20%の部屋よりも50%のほうが暖かく感じやすいといわれています。冬の感染症対策にも重要となるため、暖房の設定温度と合わせて湿度を管理することがポイントです。
空調管理による感染症対策は、こちらの記事をご確認ください。
出典:環境省『エアコンの使い方について』『湿度への気配りはヘアケアなどにも効果的!』
効率的な暖房運転を行う方法
設定温度の見直しに加えて、効率的な暖房運転を行うことで節電につながります。
➀定期的にメンテナンスを実施する
業務用エアコンは、2~3年に一度の頻度で定期的にメンテナンスを実施することが欠かせません。
フィルターや内部の部品に汚れ・ホコリが付着していると、吸排気をスムーズに行えなくなり、暖房運転に負荷がかかります。また、経年劣化による部品の摩耗・腐食などによって性能が低下する可能性もあります。
専門の事業者に依頼して定期的な点検や内部の洗浄、部品の交換などを行うことで、本来の性能を維持して効率的な暖房運転を行えます。
業務用エアコンのメンテナンスについてはこちらの記事をご確認ください。
②業務用エアコンに搭載された省エネ機能を活用する
業務用エアコンのなかには、節電に役立つ機能が備わった機種があります。施設の利用状況や室温に合わせて、暖房の運転を制御できる機能を活用することで、電力消費量を最小限に抑えられます。
▼省エネ機能の例
機能 |
概要 |
タイマー設定 |
運転時間を設定して必要なときのみ暖房を使用する |
人感センサー |
人を検知して風量・風向を自動で調整する |
自動制御 |
室温や電気の使用量をモニタリングしてコンプレッサーの駆動を 自動で制御する |
③室温を保ちやすい方法で換気を行う
暖房の使用時に清潔な空気環境を維持するには、こまめに換気を行うことが重要です。冬季に窓を開けると外気の影響で室温が下がりやすいため、効率的に換気を行える方法を取り入れる必要があります。
▼換気を行うポイント
- 人がいない部屋の窓を開放して、廊下・ドアを介して換気を行う(2段階換気)
- 温湿度計を設置して、室温が低下しすぎない範囲で窓開け換気を行う
- 窓開け換気を行う際は、加湿器を使用して湿度を保つ
- 全熱交換器を導入する など
全熱交換器で換気を行うと、排気した空気に含まれる熱を給気に回収することが可能です。外気の取り込みによる室温の低下を抑えられるため、暖房の運転負荷を削減して節電につながります。
業務用エアコンの使用中に行う換気については、こちらの記事をご確認ください。
業務用エアコンが古い場合にはリニューアルも選択肢の一つ
施設に導入してから長期間が経っている業務用エアコンの場合には、新たにリニューアルを行うことも有効です。
冷暖房の使用環境や運転状況、建物の構造などを踏まえて、施設に合った業務用エアコンを導入することで高効率な運転を実現できます。
▼業務用エアコンを選ぶ際に確認するポイント
- 施設の環境や用途に応じた冷暖房能力があるか
- インバーター技術が採用されているか
- エネルギー効率や省エネ性能の高い機種か
- 自動霜取り機能があるか など
なお、業務用エアコンの省エネ性能を示す単位には“COP値(※1)”や“APF値(※2)”があり、エネルギー消費効率がどれくらいよいかを判断する指標となります。数値が大きいほど、省エネ性能が高い機種といえます。
暖房使用時の霜取り運転についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
※1…一定の温度環境下における消費電力1kW当たりの冷房・暖房能力
※2…一年を通して一定の条件でエアコンを使用したときの消費電力量1kWh当たりの冷房・暖房能力
まとめ
この記事では、暖房使用時の節電について以下の内容を解説しました。
- 暖房の設定温度で電気料金を節約できる理由
- 節電につながる暖房の設定温度
- 効率的に暖房運転を行う方法
- 業務用エアコンのリニューアルを行うポイント
暖房の設定温度を低くすることで、運転の負荷を抑えて電力消費量を削減できます。ただし、快適性を損なわないようにするには、空気を循環させて暖かさを均一にしたり、加湿によって体感温度を上げたりする対策が必要となります。
また、節電効果を高めるには、定期的なメンテナンスや運転方法の見直しを行うとともに、施設に合った業務用エアコンにリニューアルすることも一つの方法です。
TAKEUCHIでは、業務用エアコンの定期的な点検・メンテナンスやリニューアルをトータルサポートしています。施設の課題に応じた空調のプランニングによって、省エネ化と快適性の向上を実現します。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。
また、業務用エアコンの導入・リニューアルに活用できる補助金は、こちらの資料にまとめています。ぜひご活用ください。