介護施設・老人ホームで省エネを実現するには? 役立つ対策集
高齢者が利用する介護施設では、快適な施設環境の維持や日常的なケアなどを行うために、さまざまな設備が稼働しています。
しかし、世界的なエネルギー価格の高騰によって電気料金の値上げが行われるなか、「光熱費が負担となっている」という課題を持つ介護施設もあるのではないでしょうか。
また、温室効果ガスの削減を目指す2050年のカーボンニュートラルや持続可能な社会の実現が世界全体での課題とされており、省エネルギー(以下、省エネ)化の取り組みが求められています。
この記事では、施設管理者に向けて介護施設で行える省エネ対策を3つの分野に分けて解説します。
空調設備のリニューアルを活用した省エネについてはこちらの資料にまとめています。ぜひご活用ください。
空調設備で省エネを実現!空気の流れを可視化する気流シミュレーション
目次[非表示]
- 1.【対策➀】空調に関する省エネ対策
- 1.1.設定温度の見直し
- 1.2.空調設備のメンテナンス
- 1.3.高効率な空調設備への交換
- 2.【対策②】設備に関する省エネ対策
- 3.【対策③】建物全体に関する省エネ対策
- 3.1.断熱リフォームの実施
- 3.2.太陽光発電システムの導入
- 3.3.電力使用量の可視化
- 4.まとめ
【対策➀】空調に関する省エネ対策
夏季・冬季は、冷暖房の使用によって電気料金が増えやすくなります。特に医療機関においては消費電力の3割以上が空調によるものとなっており、省エネ化によるコスト削減の効果は大きいと考えられます。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『夏季の省エネ・節電メニュー』
設定温度の見直し
業務用エアコンの設定温度を見直す方法があります。
環境省が推奨する室内の温度は、夏季で28℃、冬季で20℃となっています。また、高齢者施設におけるエアコンの設定温度は、夏が26~28℃、冬は20~22℃が目安として設定されている施設が多くみられます。
熱中症対策やヒートショックの予防のためにも、夏は26~28℃程度、冬は22~26℃程度の室温を維持することが望まれます。ただし、冬場であっても26℃以上になると熱中症のリスクが高まります。
加えて、外気温と設定温度の差が大きくなるほど運転に負荷がかかり消費電力が増加するほか、体への負担にもつながります。
省エネ対策のほか、利用者の健康・安全のためにも、できる限り推奨温度を維持することがポイントです。
▼設定温度を緩和する際のポイント
- 利用者の体感温度や体調などを考慮して無理のない範囲で行う
- エアコンの除湿機能や加湿器を活用して湿度管理を併せて行う
- エアコンやサーキュレーターを用いて効率よく送風が届くようにする など
なお、エアコンによる温度管理のポイントはこちらの記事をご確認ください。
出典:環境省『エアコンの使い方について』
空調設備のメンテナンス
空調設備は、定期的にメンテナンスを行うことが重要です。室内機・室外機の内部にホコリや汚れが付着していると、エアコンの運転効率が悪くなり消費電力の増加を招きます。
定期的なフィルターの清掃や、2~3年に1度の専門事業者による内部までの洗浄を行うことで、本来あるエアコンの能力を発揮できるようになり、省エネにつながります。
なお、業務用エアコンの洗浄方法やメンテナンスについては、こちらの記事で解説しています。
高効率な空調設備への交換
高効率な運転ができる空調設備に交換することも省エネ対策の一つです。
導入してから15年以上更新していない空調設備は、部品の摩耗・劣化によって冷暖房や換気の能力が低下しやすくなります。メーカーの耐用年数に近づいたら、現在よりも高効率で省エネ性の高い空調設備へのリニューアルがおすすめです。
▼高効率な空調設備の仕組み
機能 |
概要 |
ヒートポンプ |
空気中の熱エネルギーを利用して冷暖房を行う |
デマンド制御 |
消費電力量を常時監視して、事前に設定した目標デマンド値を超えた場合に自動的に運転を制御する |
人感センサー |
人がいないことを検知して自動で運転を停止する |
なお、ヒートポンプの仕組みについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【対策②】設備に関する省エネ対策
入居型の介護施設では、24時間365日にわたって施設内の電力を使用します。また、食事の提供や入浴介助を行うために浴室と厨房がある施設では、消費電力が増えやすくなります。
照明設備の交換
各エリアの利用状況に合わせてオン・オフをこまめに切り替えたり、消費電力を抑えたりできる照明設備に交換することが効果的です。
▼照明設備の省エネ対策
- 蛍光灯をLED照明に交換する
- 人感センサーを取り付ける など
LED照明に交換すると、蛍光灯と比べて消費電力を2分の1程度(※)に抑えられるほか、寿命が長くなり買い替えによるコストも軽減できます。また、人感センサーは人がいないときに消灯または減光できるため、消費電力を最小限に抑えられます。
※同じ明るさのLED照明とした場合の目安。
出典:環境省『照明について』
給湯設備の交換
浴室や洗面所などでお湯を使う機会が多い介護施設では、ガスの消費量を抑えられる給湯設備へ交換する方法があります。
▼省エネにつながる給湯設備の例
給湯設備 |
概要 |
潜熱回収型給湯器 |
燃焼排気ガスの熱を再利用して水を加熱することでお湯をつくる |
太陽熱集熱器 |
施設の屋上・屋根上に太陽熱集熱器を設置して、太陽熱によりお湯をつくる |
ヒートポンプ給湯器 |
空気中の熱をくみ上げて、高温化した冷媒の熱を水に伝えることでお湯をつくる |
再生可能エネルギーやガスを効率的に使用した業務用給湯器を導入することで、ガスの消費量を削減できるほか、CO2の排出量を抑えて環境保護の貢献につながります。
厨房設備の見直し
冷蔵・冷凍庫や換気ファン、食器洗浄機などの厨房設備では、無駄な電力を消費しないように使用方法を見直します。
▼厨房設備の省エネ対策
対策項目 |
取り組み |
冷蔵・冷凍庫 |
|
換気ファン |
|
食器洗浄機 |
|
【対策③】建物全体に関する省エネ対策
介護施設の省エネ化を実現するには、建物に関する設備投資や改修工事を実施することも一つの方法です。
断熱リフォームの実施
建物の断熱性を高めると、空調設備で冷やした・暖めた空気が外に逃げるのを抑えられるようになり、運転効率を高められます。
▼断熱リフォームの例
- 外壁・天井裏・床下に断熱材を施工する
- 二重サッシや複層ガラスへの交換・内窓の新設を行う
- 断熱・保温機能のあるユニットバスを導入する など
夏には涼しく、冬には暖かい室内環境を維持することは、快適性の向上や施設内の温度差による健康トラブルの防止にもつながります。
太陽光発電システムの導入
太陽光発電システムを導入すると、日照時に太陽の光エネルギーを蓄えて空調設備や給湯設備の電力として使用できるようになります。
電力会社から供給される電力の使用量を減らすことにより、コストの削減を図れます。また、蓄電池設備を併せて設置すると災害時の電力供給が可能となり、利用者が安心して過ごせる環境づくりにつながります。
電力使用量の可視化
介護施設の省エネ対策を進めるには、電力使用量をグラフで可視化できるシステムを導入することが重要です。
消費電力が多い設備・時間帯を把握することで、運用方法の見直しによるピークカットの方法や高効率な設備への交換などを検討できます。
まとめ
この記事では、介護施設の省エネについて以下の内容を解説しました。
- 空調に関する省エネ対策
- 設備に関する省エネ対策
- 建物に関する省エネ対策
介護施設では、利用者が安全かつ快適に過ごせる環境を維持しつつ、効率的に設備を運転できるように省エネに取り組むことが大切です。設備投資や運用方法の見直し、改修工事などさまざまな省エネ対策があるため、施設の課題に合わせて検討してみてはいかがでしょうか。
TAKEUCHIでは、介護施設をはじめ学校や工場、オフィスなどにおける空調設備の改善をトータルサポートしています。施設の課題に応じた空調のプランニングによって、省エネ化と快適性の向上を実現します。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。
また、業務用エアコンの導入・リニューアルに活用できる補助金は、こちらの資料にまとめています。ぜひご活用ください。