工場における熱中症対策。安全で快適な作業環境を整備するには
近年、地球温暖化に伴う気温の上昇によって夏場の記録的な暑さが見られており、熱中症による死亡事故が増加傾向にあります。
▼熱中症による死亡者の状況 5年移動平均(全国)
画像引用元:環境省熱中症予防情報サイト『今夏の振り返り』
なかでも製造設備が稼働する工場では、高温・多湿な環境になりやすいことから、従業員の安全を守るための熱中症対策が欠かせません。
工場の施設管理者のなかには、「工場で熱中症のリスクはあるのか」「どのような対策を行えばよいか」など気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、工場における熱中症のリスクと従業員の安全で快適な作業環境を整備するための熱中症対策について解説します。
出典:環境省熱中症予防情報サイト『今夏の振り返り』
目次[非表示]
- 1.工場における熱中症のリスク
- 2.工場の熱中症対策でできること
- 2.1.➀従業員の健康管理
- 2.2.②通気性・透湿性のよい作業着の支給
- 2.3.③巡回点検の実施
- 2.4.④作業場に応じた空調設備の導入
- 3.まとめ
工場における熱中症のリスク
熱中症は、高温多湿な環境によって体内の水分・塩分のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節などの重要な機能が破綻したりすることによって生じる症状の総称です。
夏場を中心に熱中症の発生が相次ぐなか、製造業においても熱中症が多数発生しており、重篤化して死亡に至るケースも見られています。
厚生労働省の『令和5年 職場における熱中症による死傷者数の発生状況(確定値)』によると、2023年の製造業における熱中症の死傷者数は231名ともっとも多いことが報告されています。2019~2023年の合計で見ても、建設業と合わせて約4割が2つの業種で発生している状況です。
▼【業種別】熱中症による死傷者数の割合(2019~2023年)
画像引用元:厚生労働省『令和5年 職場における熱中症による死傷者数の発生状況(確定値)』
製造業では熱中症による死傷者数の割合が多いことから、従業員の健康管理や作業環境の管理について特に注意が必要と考えられます。
なお、工場での温度管理を行う方法についてはこちらの記事で解説しています。
出典:厚生労働省『令和5年 職場における熱中症による死傷者数の発生状況(確定値)』
工場の熱中症対策でできること
工場の施設管理者は、高温多湿を防ぐための作業環境面での対策をはじめ、熱中症が疑われる従業員を早期発見して応急措置につなげられる体制をつくることが重要です。
➀従業員の健康管理
従業員の日常的な健康管理を行い、熱中症を発症する可能性がないかを確認することが欠かせません。
睡眠不足や体調不良、前日の飲酒などは、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあると考えられています。施設管理者は、以下の方法によって健康管理を行うことが重要です。
▼日常的な健康管理の方法
- 日々の健康管理に関する指導を行う
- 作業開始前に睡眠や体調、飲酒、朝食の摂取有無などの健康状態を確認する
- 熱中症を予防する対応が必要となる場合には、申し出るように伝える など
また、治療中の疾患がある従業員については、高温多湿な環境での作業可否について主治医や産業医の意見を確認することも必要です。熱中症の予防について配慮が必要な従業員については、就業場所の変更や作業の転換などを行います。
出典:厚生労働省『職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について』
②通気性・透湿性のよい作業着の支給
高温多湿な環境で作業を行う場合には、熱を吸収または保湿しやすい服装を避けて、通気性・透湿性のよい作業着を支給する必要があります。
▼通気性・透湿性のよい作業着の例
- 冷却機能付きジャケット
- 送風機付き作業着
- 送風機付きヘルメット など
直射日光下での作業がある場合には、通気性のよい帽子やヘルメットを着用することもポイントです。
また、飛沫飛散防止器具については、暑苦しさや不快感につながることから、作業内容・作業負荷などに応じた器具を選択するとともに、外してもよい場所・作業を明確にして周知しておくことが重要です。
出典:厚生労働省『職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について』『令和6年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱』
③巡回点検の実施
工場での作業時間中は定期的に巡回点検を実施して、従業員の健康状態を確認することも対策の一つです。
▼巡回点検で確認するポイント
- 熱中症が疑われる症状が見られないか
- 定期的に水分・塩分を摂取しているか
熱中症による軽度の症状には、めまいや立ち眩みなどが挙げられます。頭痛や嘔吐、倦怠感、集中力の低下などが見られる場合には、速やかに病院へ搬送して医療機関の診療を促します。
また、飲料水やスポーツドリンクを常備して摂取を促したり、体表面を冷却するプレクーリング(※)を実施したりして、水分不足と体温の上昇を防ぐための対策も必要です。
ただし、熱中症の発症しやすさには個人差があります。従業員の心拍数や体温などを計測できるウェアラブルデバイスを着用してもらい、健康状態を確認することも有効といえます。
※暑熱環境での作業開始前に深層体温を下げて、体温の上昇を抑える方法
出典:厚生労働省『職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について』『令和6年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱』『職場でおこる熱中症』
④作業場に応じた空調設備の導入
工場における熱中症のリスクを低減するには、空調設備を導入して適切な温度環境を保つことが重要です。
空調設備の導入を検討する指標となるのが“WBGT値(暑さ指数)”です。WBGT値とは、暑熱環境による熱ストレスを評価する指数となり、日常生活においては28以上31未満(厳重警戒)を超えると熱中症のリスクが高まるとされています。
工場の各作業場にWBGT値の指数計を設置して点検を行い、基準値を超える場合には冷房や送風機などの空調設備を運転することが必要です。
なお、工場で空調設備の稼働効率を高めるポイントや導入事例については、こちらの記事で解説しています。
出典:厚生労働省『職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について』『令和6年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱』/環境省熱中症予防情報サイト『暑さ指数(WBGT)について』
まとめ
この記事では、工場の熱中症対策について以下の内容を解説しました。
- 工場における熱中症のリスク
- 工場の熱中症対策でできること
工場では高温多湿な環境での作業が発生する現場もあり、熱中症のリスクがほかの業種と比べて高くなっています。夏場の熱中症を防ぐには、日常的な健康管理や作業着の見直しを行うとともに、定期的な巡回点検を実施して健康状態を確認することがポイントです。
また、飲料水やスポーツドリンクを常備したり、WBGT値を踏まえて空調設備を利用したりして、水分不足と体温の上昇を防ぐ対策も重要です。空調設備を導入すると、暑さや作業場に応じて温度管理を行えるため、安全かつ快適な作業環境を維持できます。
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