工場の省エネを実現するには? 持続可能な社会に貢献する工場を目指す3つの対策
地球温暖化への対策が世界全体の課題とされるなか、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする“カーボンニュートラル”を目指すことを宣言しました。
温室効果ガスは、その約9割が二酸化炭素となっており、経済活動や日常生活のなかで排出されています。特に産業部門においては全体の27%(※)を占めています。
▼【部門別】エネルギー起源CO2排出量
画像引用元:環境省 『2021年度(令和3年度)温室効果ガス排出量(確報値)について』
モノづくりを担う工場においては、持続可能な社会の実現に貢献するために省エネの推進が求められます。省エネを推進するには、主に電力関連・生産設備・空調設備の3つについての対策が重要です。
この記事では、工場における省エネ対策を電力関連・生産設備・空調設備の3つに分けて解説します。
※電気・熱配分前排出量
出典:環境省 『2021年度(令和3年度)温室効果ガス排出量(確報値)について』
目次[非表示]
- 1.【対策➀】電力関連の省エネ対策
- 1.1.太陽光発電と蓄電池の導入
- 1.2.消費電力の見える化
- 2.【対策②】生産設備の省エネ対策
- 2.1.加熱設備の断熱強化
- 2.2.排熱の再利用
- 2.3.コンプレッサ・ポンプ・ファンの管理
- 3.【対策③】空調設備の省エネ対策
- 3.1.設定温度・運転方法の見直し
- 3.2.室内機・室外機の清掃
- 3.3.高効率な空調設備へのリニューアル
- 4.まとめ
【対策➀】電力関連の省エネ対策
工場では、電気やガス、化石燃料(石油・石炭)などのさまざまなエネルギーが使用されています。
経済産業省 資源エネルギー庁『令和4年度エネルギー消費統計結果概要』によると、製造業のエネルギー消費量でもっとも多いのが“電力”となっており、全体の51.2%を占めています。
省エネを推進するには、消費エネルギーの多くを占める電力の使用量を削減することが重要なポイントです。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『令和4年度エネルギー消費統計結果概要』
太陽光発電と蓄電池の導入
太陽光発電と蓄電池を導入して、工場で使用する電力の一部を再生可能エネルギーに置き換える方法があります。
太陽光発電は、太陽光パネルから吸収した太陽の光エネルギーを直接電気に変換する発電方法です。蓄電地と併用することにより、停電時の非常用電源としても使用できるようになり、工場の持続的な稼働につながります。
▼太陽光発電と蓄電池の導入で期待できること
- 電力会社や化石燃料に依存せずにエネルギーを自給できる
- 工場での二酸化炭素の排出量を減らして環境保護に貢献できる
- 電力のピークカットによりコストを削減できる など
消費電力の見える化
工場全体の消費電力を見える化することもポイントの一つです。
工場内にある生産設備や空調設備、照明などの消費電力を継続して、データを収集・蓄積できるシステムを活用することにより、エネルギーの使用状況を把握できるようになります。
消費電力をデータとして見える化することで、「どの設備の消費電力が多いか」「電力をムダに使用している工程はないか」など明らかにして、省エネに向けた改善策を検討できます。
▼消費電力の見える化による改善策の例
- 生産設備を使用しない時間帯を特定して電源をオフにする
- 消費電力が最大値を超える際に再生可能エネルギーへ切り替える
- 消費電力が大きい生産ラインは高効率な生産設備に入れ替える など
【対策②】生産設備の省エネ対策
工場における消費電力のうち、生産設備が占める割合は83%と多くを占めています。省エネを実現するには、生産設備の運転方法や製造工程を見直して、効率的にエネルギーを使用できる稼働体制にすることがポイントです。
出典:経済産業省『夏季の省エネ・節電メニュー』
加熱設備の断熱強化
工場にある加熱設備の断熱性を高める方法があります。
溶解や加熱などの熱処理を行う設備では、熱が外部に放出されることによってエネルギーのロスが生じやすくなります。断熱性を高めて放熱を抑えることにより、高効率な運転が可能になり、省エネにつながります。
▼加熱設備の断熱性を高める省エネ対策の例
- 電気炉の表面に断熱材を施工する
- 電気加熱装置を断熱塗料でコーティングする など
排熱の再利用
製造工程で発生する排熱を再利用する方法です。
工場炉やボイラーなどから発生した熱を有効活用することで、稼働負荷を低減したり、ほかの設備にかかるエネルギーの使用量を抑えたりする効果が期待できます。
▼排熱を再利用する省エネ対策の例
- 熱処理時に発生する熱風を回収して工場炉の予熱を行う
- ボイラーの排気ガスから熱を回収して給水の加熱を行う
- 工場炉の排熱を使用して施設内の暖房を行う など
コンプレッサ・ポンプ・ファンの管理
省エネを実現するために、コンプレッサ・ポンプ・ファンの運転を管理する方法があります。
工場内で稼働するコンプレッサ・ポンプ・ファンの運転を制御することにより、消費電力のムダを抑えて高効率な運転が可能になります。
▼コンプレッサ・ポンプ・ファンにおける省エネ対策の例
- コンプレッサの吐出圧やボイラーの圧力を測定して定期的に調整する
- インバータを導入して回転数・流量・風量の調整を行う
- 台数制御を行える装置やシステムを導入して、運転負荷に応じた制御を行う など
【対策③】空調設備の省エネ対策
工場では、製品に応じた温度管理や従業員の快適で安全な施設環境の維持を行うために、空調設備が導入されています。特に夏場の日中は空調設備によるエネルギーの使用量が増えやすいため、省エネ対策が求められます。
設定温度・運転方法の見直し
空調設備の設定温度・運転方法を見直すことで消費電力を削減できます。
冷暖房の設定温度を1℃緩和した場合の消費電力は、冷房時で約13%、暖房時で約10%削減されると見込まれています。作業場やエリアに応じて設定温度を緩和したり、運転のオン・オフを切り替えたりすることで、省エネにつながります。
▼省エネにつながる設定温度・運転方法の見直し例
- 夏場の作業場は、無理のない範囲で設定温度を上げる(例:26℃→28℃)
- 個別空調によって曜日や時間帯ごとに運転を切り替える
- 排気ファンの一時停止や間欠運転によって外気取入量を調整する
- スポット空調を併用して空調の運転効率を高める など
なお、工場における空調設備の課題についてはこちらの記事で解説しています。
出典:環境省『エアコンの使い方について』
室内機・室外機の清掃
室内機・室外機を定期的に清掃すると、空調設備の省エネにつながります。
フィルターがほこりや汚れで目詰まりしていると、空気を循環する能力が低下して余分な電力を消費してしまいます。定期的に清掃をして汚れを取り除くことで、スムーズに空気を循環できるようになり、消費電力を抑えられます。
また、フィルターの清掃だけでなく以下の対策も省エネに有効といえます。
▼空調設備における省エネ対策の例
- 熱交換器の清掃を行う
- 室外機を冷却するための噴霧・散水装置を設置する など
高効率な空調設備へのリニューアル
既存の空調設備を長年利用しており、経年による老朽化が進んでいる工場では、高効率な空調設備へのリニューアルを行うことも一つの方法です。
工場で取り入れられる空調方式には、主に以下の4種類があります。
▼工場で用いられる空調方式
空調方式 |
仕組み |
全体空調方式 |
工場全体を一つの空調システムで一元管理して、温度・湿度の制御を行う |
部分空調方式 |
特定のエリアごとに独立した空調システムを設置して、個別に温度・湿度調整を行う |
ゾーン空調方式 |
複数のエリアを一つの空調システムで管理して、区域ごとに温度・湿度調整を行う |
スポット空調方式 |
特定の作業場や機器など、冷暖房が必要な場所だけに空調設備を設置する |
効率的な運転を実現するには、工場の稼働時間や作業環境などを踏まえて自社に合った空調方式を選択することがポイントです。
また、空調による消費電力が大きく電気料金が負担となっている工場では、冷暖房の動力源に電気ではなくガスを用いる“GHP”を選ぶ方法もあります。
GHPの仕組みについては、こちらの記事で解説しています。
空調設備のリニューアルに関する事例は、こちらの資料をご確認ください。
まとめ
この記事では、工場の省エネ対策について以下の内容を解説しました。
- 電力関連の省エネ対策
- 生産設備の省エネ対策
- 空調設備の省エネ対策
カーボンニュートラルの達成が目標に掲げられているいま、工場においても生産設備や空調設備などの省エネに取り組むことが求められます。
なかでも生産設備にかかる消費電力は、ほかのエネルギーと比べて多くの割合を占めているため、高効率な稼働や再生可能エネルギーの活用などが重要となります。
また、夏場は特に空調設備の消費電力が増えやすくなります。省エネにつなげるには、設定温度や運転方法を見直すとともに、定期的な清掃を行い冷暖房効率を高めることがポイントです。既存の空調設備を長期間使用している場合には、リニューアルを実施することも一つの方法です。
TAKEUCHIでは、工場をはじめ学校や介護施設、オフィスなどにおける空調設備の改善をトータルサポートしております。施設の課題に応じた空調のプランニングによって、省エネ化と快適性の向上を実現します。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。