ハイブリッド空調『スマートマルチ』で省エネを実現! 設備の仕組みと4つの特徴
学校や医療機関、オフィスビルでは、消費電力の多くを空調設備が占めており、特に夏季・冬季は冷暖房によるエネルギーの使用量が増えやすくなります。
快適な施設環境を維持しつつランニングコストを抑えるには、高効率な運転で省エネルギー化を実現する空調設備へとリニューアルを検討する方法があります。なかでも業務用空調設備の新たな選択肢として登場しているのが、ガスと電気の両方を使用するハイブリッド空調の『スマートマルチ』です。
空調設備のリニューアルを検討している施設管理者のなかには、「ハイブリッド空調はどのような仕組みなのか」「スマートマルチで何ができるのか」など気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ハイブリッド空調の仕組みとスマートマルチの特長、導入事例について解説します。
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ハイブリッド空調とは
ハイブリッド空調とは、GHP(ガスヒートポンプ)とEHP(電気ヒートポンプ)を組み合わせた空調設備です。
GHPとEHPは、どちらも空気中の熱エネルギーを使用して冷媒物質を循環させる“ヒートポンプ”の仕組みを採用しています。冷媒物質を循環させる設備のうち、圧縮機(コンプレッサ)の駆動源と駆動源を動かすエネルギー源に違いがあります。
▼GHPとEHPの違い
GHP |
EHP |
|
圧縮機の駆動源 |
ガスエンジン |
電気モーター |
エネルギー源 |
都市ガス・プロパンガス など |
電気 |
ハイブリッド空調の『スマートマルチ』では、圧縮機の駆動源とエネルギー源が異なるGHPとEHPの両方を同一の冷媒系統に接続して室外機の制御を行います。
エネルギーの使用状況を遠隔監視するクラウドシステムの『エネシンフォ』と併せて運用する必要があります。
なお、GHPとEHPのメリット・デメリットはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
『スマートマルチ』によるハイブリッド空調の構成
『スマートマルチ』を使用したハイブリッド空調は、5つの設備やサービスによって構成されています。
▼ハイブリッド空調の構成
システム構成 |
概要 |
冷媒配管 |
ガスエンジンと電気モーターを同一冷媒系統に接続する |
室内機 |
冷媒配管を通して室内に冷風・温風を届ける |
室外ユニット |
1つの室外ユニットにガスエンジンと電気モーターを内蔵して設置する |
遠隔監視アダプタ |
室外機に取り付けてガスエンジンと電気モーターの運転データをガス会社の遠隔監視サーバに送信する |
最適制御サービス |
ガス会社に送信された運転データを基に運転比率の監視や自動制御を行う |
最適制御サービスは都市ガス3社によって提供されており、『エネシンフォ』については東京ガス株式会社での契約が必要です。
ハイブリッド空調『スマートマルチ』の特長
ハイブリッド空調の『スマートマルチ』は、GHPとEHPそれぞれの強みを生かしてエネルギー使用量の最適化を実現することが可能です。
➀運転比率の制御で高効率な運転ができる
ガスエンジンと電気モーターの運転比率を監視して、外気温や稼働状況などの負荷に応じて使用するエネルギーを制御することにより、高効率な運転を実現します。
GHPの消費電力は、EHPと比較して約10分の1(※)となるため、空調負荷が高いときに電力デマンドを抑えることが可能です。一方のEHPは、電力デマンドに余裕があり、空調負荷が低いときに高効率な運転ができます。
▼運転比率の制御パターン
制御パターン |
概要 |
EHPの単独運転 |
空調負荷や電力デマンドが低いときに電気モーターのみで運転する |
GHPの単独運転 |
空調負荷が高い時期や電力デマンドが逼迫しているときにガスエンジンのみで運転する |
EHP+GHPの混在運転 |
運転コストを基準に効率のよい運転方法を切り替える |
EHP+GHPの主体運転 |
電力デマンドの上昇時に上限を超えないように電気モーターの運転をセーブしてガスエンジンで運転する |
※機種によって異なる場合があります。
②電力のピークカットができる
『スマートマルチ』と『エネシンフォ』を組み合わせて運転比率の制御を行うことで、電力のピークカットが可能になります。
学校・介護施設・工場・オフィスなどの高圧受電を必要とする施設では、一定期間における電力デマンドの最大値を基に契約電力の基本料金が設定されます。
エネルギーの使用量が増えやすい時間帯に、消費電力が少ないGHPの運転を主体にしてピークカットを行うことで節電につながり、電気の基本料金を削減できます。
また、ガスと電気それぞれの最新料金を管理して自動制御を行えるため、エネルギーコストの変動リスクを抑えることが可能です。
③幅広いニーズ・設置条件に対応できる
『スマートマルチ』では、多様な形状の室内機が用意されており、幅広いニーズ・設置条件に対応することが可能です。
施設の規模や構造、用途などに応じて室内機の形状を選ぶことで、省エネルギー化を図りながら快適に過ごせる環境を整備できます。
▼室内機の主な種類
- 天井埋込カセット形(1~4方向吹出)
- ビルトイン形
- 天井埋込ダクト形
- 天井吊形
- 壁掛形
- 床置ダクト形 など
④施工工数を削減できる
『スマートマルチ』には、1つの室外ユニットにガスエンジンと電気モーターが内蔵されている機種があります。
GHPとEHPそれぞれの室外機を連結して設置するユニットと比べて、配管・配線の施工にかかる工数を削減することが可能です。
既存の配管を利用したリニューアルにも対応できる機種を選べることから、大がかりな改修工事をせずに導入できる場合もあります。
なお、空調設備の導入時に活用できる補助金・助成金についてはこちらの記事をご確認ください。
教育施設に『スマートマルチ』を導入した事例
学校法人立教学院 立教大学池袋キャンパスでは、TAKEUCHIによる空調設備の導入支援によって図書館収蔵庫における空調設備のリニューアルを実施されました。
▼学校法人立教学院 立教大学池袋キャンパスの図書館収蔵庫
図書館収蔵庫には貴重な資料が多数保管されており、年間を通して必要な空調管理が負担につながっていました。
そこで、ガスと電気を組み合わせたハイブリッド空調の『スマートマルチ』とクラウド制御サービスの『エネシンフォ』を導入しました。これにより、エネルギー使用量や空調管理のコストを削減でき、安定した環境維持につながっているとのことです。
詳しくは、こちらをご確認ください。
まとめ
この記事では、ハイブリッド空調について以下の内容を解説しました。
- ハイブリッド空調の仕組み
- スマートマルチの特徴
- 教育施設にスマートマルチを導入した事例
ガスと電気を組み合わせたハイブリッド空調では、空調負荷や運転状況に応じて使用するエネルギーを変えられるため、高効率な運転を行えるようになります。
『スマートマルチ』とクラウド制御サービスの『エネシンフォ』を併せて導入・運用することにより、ガスと電気のエネルギー使用量を可視化したり、運転比率を自動で制御したりすることが可能です。
また、コンパクトな設計かつ室内機の種類も豊富なため、施設の規模や構造、用途などに合わせた設置を行えます。
TAKEUCHIでは、空調設備の改善をトータルサポートしております。学校や介護施設、工場、オフィスなどの幅広い施設で空調設備の導入を支援してきた経験と専門知識を基に、課題に合わせた環境づくりをプランニングいたします。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。