
業務用エアコンの高調波とは。学校や工場、オフィスなどの施設管理者に求められる対策
近年、業務用エアコンをはじめとした電気設備の高機能化が進む一方で、“高調波”によるトラブルも増えつつあります。
高調波は、電気設備の安定稼働を妨げるだけでなく、ほかの電子機器への誤作動や故障を引き起こす可能性があるため、無視できない問題です。
本記事では、学校や工場、オフィスなどの施設管理者や設備担当者に向けて、業務用エアコンに関連する高調波の基礎知識やその対策方法について解説します。
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目次[非表示]
1.高調波とは
高調波とは、電力系統に流れる基本周波数(日本では50Hzまたは60Hz)の整数倍の電圧・電流を指します。
本来、電気はきれいな正弦波で流れますが、インバータやパワーエレクトロニクス機器の影響により、波形が歪み、基本波以外の成分である高調波が発生する場合があります。
高調波を発生させる主な機器には、以下が挙げられます。
- インバータ搭載の業務用エアコンやエレベーター
- LED照明
- 無停電電源装置(UPS)
- パソコン
- コピー機 など
モーターの回転数制御に用いられるインバータは、省エネ効果が高い一方で、高調波発生のリスクがあります。
2.業務用エアコンの高調波が引き起こす影響
業務用エアコンなどから発生する高調波は、施設内外の電子機器や通信機器、さらには電力系統全体にさまざまな悪影響を及ぼします。
高調波が増加すると、電圧や電流の波形が歪み、機器の誤作動や寿命の短縮、通信障害、電力損失の増加などが発生します。
高調波の影響を受けやすい機器や設備には、精密電子機器や通信機器、医療機器、照明設備、モーター駆動装置などが挙げられます。
これらの機器は高調波による電圧・電流の歪みに敏感で、誤作動や故障のリスクが高まるほか、異音や振動が発生することがあります。
また、変圧器や配電盤、コンデンサなどの電力設備も高調波の影響で発熱や損傷のリスクがあります。
3.高調波の抑制を規定したガイドライン
高調波の発生を抑制するために、経済産業省は『高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン』を制定しています。
このガイドラインは、電力系統に与える高調波の影響を最小限に抑えることを目的とし、発生源となる機器の設置や運用に関する基準や目標値を定めています。
業務用エアコンやインバータ機器など、高調波を発生させる設備を新設・増設・更新する場合、ガイドラインで定められた高調波電流の目標値を超えないように対策を行う必要があります。
目標値を超過する場合は、抑制装置の設置や機器の選定見直しなど、追加の対策が求められます。
なお、業務用エアコンを導入・リニューアルする施設では、補助金を活用できる場合があります。2025年度公募の補助金制度については、こちらの記事で解説しています。
3-1.適用対象となる事業者
高調波抑制対策ガイドラインは、主に高圧か特別高圧で電力を受電している事業者が対象です。
工場や大型商業施設、学校、病院、オフィスビルなど、多くの電力を消費する施設が該当します。
3-2.高調波の抑制対策が求められる機器
ガイドラインでは、インバータ搭載の空調設備、エレベーター、LED照明、UPS、各種モーター駆動装置など、高調波を多く発生させる機器が抑制対策の対象とされています。
これらの機器を新たに導入・増設・更新する際は、事前に高調波発生量を計算し、必要に応じてフィルタやリアクトルなどの抑制装置を設置することが求められます。
また、既存設備の運用状況も定期的に確認し、基準値を超えないよう管理することが重要です。
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3-3.高調波の抑制に関する上限値
ガイドラインでは、需要家(施設)から電力系統へ流出する高調波電流の上限値が、受電電圧と契約電力に応じて次数別に設定されています。
対象となる設備を新設・増設・更新する場合、『高調波流出電流計算書』の提出が必要です。計算結果が上限値を超える見込みの場合は、フィルタ設置などの抑制対策を検討・実施する必要があります
詳細は、各電力会社が公開しているガイドライン本文と附属書(計算方法・補正率・次数別上限値の表)を参照してください。
4.業務用エアコンにおける高調波対策はプロに依頼が安心
高圧または特別高圧で受電する施設では、電力会社から高調波計算書の提出が求められることがあります。
これは、施設が高調波発生機器を導入・増設・更新する際に、電力系統への影響を事前に評価するためです。高調波計算書には、発生する高調波電流の予測値や、抑制対策の有無などが記載されます。
高調波の発生量がガイドラインの目標値を超過する場合、施設事業者は速やかに抑制対策を実施し、その内容を電力会社に報告する義務があります。
抑制対策には、フィルタやリアクトルの設置、機器の選定見直しなどが含まれます。報告が遅れると、電力会社から指導や改善命令が出されることもあります。対策後も定期的な測定と記録が必要です。
高調波計算書の作成や、発生抑制のための具体的な対策は、業務用エアコンや電気設備の専門事業者に相談するのが確実です。専門業者は、最新のガイドラインや技術動向に精通しており、施設の状況に合わせた最適な提案が可能です。また、施工後の測定やメンテナンスも一括して依頼できます。
5.業務用エアコンの高調波対策
業務用エアコンは、長時間の連続稼働や複数台を同時に使用するケースが多く、電源設備に与える影響が大きいのが特徴です。
その際に問題となるのが“高調波”です。高調波は電流や電圧の波形を乱し、空調機器の誤作動や電力ロス、場合によってはほかの設備への悪影響につながるため、適切な対策が求められます。
5-1.機器選定・運転方法の工夫
比較的取り組みやすい対策として、エアコンの選定や運転方法の見直しがあります。
例えば、複数台の空調機を一斉に起動すると高調波が集中しやすいため、起動タイミングをずらすことでピークを避けられます。
また、建物の規模や負荷に適した容量の機器を選定することも、不要な高調波発生を抑える重要なポイントです。
なお、業務用エアコンの導入、リニューアルを検討している施設では、補助金が使用できる可能性があります。補助金制度の詳細はこちらの記事をご確認ください。
TAKEUCHIでは、空調設備のリニューアル工事・メンテナンスやシミュレーションによる気流の可視化と省エネ提案、建物・業種別課題のコンサルティングと補助金申請サポートなどが可能です。
5-2.抑制装置の導入
安定した効果を得るためには、抑制装置の導入が有効です。
装置を設置することで、電源設備や配電盤への負担を軽減し、エアコンの安定稼働を実現できます。また、建物全体の電力品質の向上や電力コスト削減にもつながります。
▼設備装置の例
対策装置 |
特徴 |
パッシブフィルタ |
比較的低コストで特定の高調波を吸収 |
アクティブフィルタ |
多様な高調波に対応可能。負荷の変動に合わせてリアルタイムに制御し、高調波を安定的に抑制。 |
高圧進相コンデンサ |
力率改善と高調波抑制を両立。 |
6.まとめ
この記事では、業務用エアコンの高調波について以下の内容を解説しました。
- 高調波とは
- 業務用エアコンの高調波が引き起こす影響
- 高調波の抑制を規定したガイドライン
- 業務用エアコンにおける高調波対策はプロに依頼がおすすめ
- 業務用エアコンの高調波対策
業務用エアコンなどから発生する高調波は、施設内外の電子機器や通信機器、さらには電力系統全体にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
また、経済産業省が定めるガイドラインに即した高調波計算書の作成や、発生抑制のための具体的な対策は、業務用エアコンや電気設備の専門事業者に相談するのが最も確実です。
TAKEUCHIでは、施設の業務用エアコンの新設・増設・更新において、空調設計から施工、アフターメンテナンスまで一貫してサポートしています。業務用エアコンの導入やリニューアルなどでお困りの際は、ぜひご相談ください。