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BEMSとは。ビルの省エネ化を推進するシステムの基本構成と導入のメリット

世界規模で進む気候変動やエネルギー供給の不安定化を背景に、脱炭素社会の実現がますます重要視されています。なかでも、温室効果ガスの排出と吸収を均衡させる「カーボンニュートラル」は、その実現に向けた中核的な目標とされており、政府もさまざまな施策を講じています。その一環として推進されているのが、建物の省エネルギー性能の向上です。

こうした取り組みの中で注目されているのが、BEMS(ベムス:Building Energy Management System/ビルエネルギー管理システム)です。

BEMSは、ビル全体のエネルギー使用状況を「見える化」し、空調・照明・換気設備などを効率的に制御することで、省エネルギー化と快適性の両立を実現する先進的なシステムです。持続可能な社会に向け、ビル単位でのエネルギー最適化を支えるキーテクノロジーとして、導入が進んでいます。

この記事では、BEMSの概要や基本的なシステム構成、行えること、メリットについて解説します。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」

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目次[非表示]

  1. 1.BEMSとは
  2. 2.BEMSの基本的なシステム構成
  3. 3.BEMSの導入によって行えること
    1. 3-1.エネルギー消費状況の可視化
    2. 3-2.消費電力のリアルタイム監視とデマンド制御
  4. 4.ビルや施設にBEMSを導入するメリット
    1. 4-1.エネルギーコストの削減
    2. 4-2.エネルギー管理における改善サイクルの効率化
    3. 4-3.ZEB化の推進
  5. 5.まとめ


1.BEMSとは

BEMSとは、“Building and Energy Management System”の略称の通り、ビルにおける空調や照明などエネルギー機器の最適な自動制御を行うシステムです。

人感知センサーや温度・湿度センサーからのデータ、機器のエネルギー使用データを収集・分析し、建物内のエネルギー使用状況を可視化・一元管理します。

室内環境を快適に保ちつつ、省エネと創エネを同時に行って年間の一次エネルギーの収支をゼロにする建物のことを、Net Zero Energy Building(略称:ZEB)と呼びます。BEMSは、ZEBを実現するためのシステムとして位置づけることが可能です。

なお、エネルギー管理システム(EMS)には、BEMSのほかに家庭向けのHEMS、工場向けのFEMSなど用途別に複数のシステムが存在します。

ZEBについてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。

  ZEBとは。建物の省エネ・創エネ・見える化でカーボンニュートラルを目指すには 現在、地球温暖化や資源・エネルギー問題といった地球規模のさまざまな問題への対応が世界全体の課題となっています。この記事では、ビル・施設を管理する担当者が知っておきたいZEBの基礎知識や取り組みのポイント、メリットなどについて解説します。 TAKEUCHI株式会社



2.BEMSの基本的なシステム構成

BEMSは一般的に、エネルギー管理共通基盤・エネルギー情報システム・エネルギー制御システムといった3種類のサブシステムで構成されています。


▼BEMSのシステム構成

システム構成の要素
役割
エネルギー管理共通基盤
各種センサー・計測器からデータを収集・蓄積する
エネルギー情報システム
収集・蓄積したデータの可視化・分析を行う
エネルギー制御システム
データを基に空調・照明の制御を行う


▼システムの配置例

システムの配置例

画像引用元:環境省『ビルエネルギー管理システム(BEMS)の導入


各種センサー・計測器から収集・蓄積したデータを可視化して分析することで、空調や照明の最適な制御が実現します。

出典:環境省『ビルエネルギー管理システム(BEMS)の導入



3.BEMSの導入によって行えること

BEMSの導入によってエネルギー消費が可視化されるほか、消費電力のリアルタイム監視とデマンド制御が可能になります。


3-1.エネルギー消費状況の可視化

BEMSの制御部では各種のセンサー・インバーター・電力量計など、建物のエネルギー消費を検知するための計測器が稼働しています。センサーには人を感知するもの、温度・湿度をデータ化するものなどがあります。

各種の機器から得られたデータは、システムに記録・蓄積され、端末上で数値やグラフとして可視化されます。

例えば、室内に人がいる場合といない場合を比較して、温度・湿度・エアコンの電力量などの変化を捉えることが可能です。可視化されたエネルギー消費状況は、問題点の把握や分析を容易にします。


3-2.消費電力のリアルタイム監視とデマンド制御

BEMSの制御部から取得した消費電力のデータは、システムによってリアルタイムに監視されます。これまでの利用状況と現在のデータを分析することで、今後の需要を予測することも可能です。

リアルタイム監視の結果、電力使用量が超過する可能性がある場合には、空調や照明を制御して電力量を抑えられます。このようにリアルタイム監視の結果を基に消費電力量を計画的に制御することを、デマンド制御と呼びます。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」

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4.ビルや施設にBEMSを導入するメリット

ビルや施設にBEMSを導入することで、エネルギーコストの削減やエネルギー消費サイクルの改善などが期待できます。また、建物におけるZEB化の推進にも寄与します。


4-1.エネルギーコストの削減

BEMが自動的に行うリアルタイム監視とデマンド制御により、電力使用量が低減することでエネルギーコストが削減できます。

環境省による試算では、年間電力消費量が6,750千kWhのビルにBEMSを導入して電力消費量を9%削減した場合、年間のエネルギーコストは導入前の1億5,400万円から1億4,000万円まで1,400万円の削減が可能とされています。

出典:環境省『ビルエネルギー管理システム(BEMS)の導入 - 対策 概要


4-2.エネルギー管理における改善サイクルの効率化

BEMSによってエネルギー消費状況を可視化することで、ビルのエネルギー管理における改善サイクルを効率的に回せるようになります。

BEMSに蓄積されたデータをグラフ化したうえで分析を行うことで、消費エネルギーを削減するための改善策の検討・実践がスムーズに行えます。また、改善策を実践した際の効果検証についてもBEMSによる効率化が可能です。


4-3.ZEB化の推進

BEMSによって建物内のエネルギー供給と消費を自動的にコントロールして最適化することで、ZEB化を推進できます。

ZEB化には省エネと創エネの2つが欠かせません。BEMSはこのうちの省エネを達成できるほか、創エネに必要な再生可能エネルギーの運用もデータの可視化によって効率化できます。

なお、ZEB化につながることから、BEMSの導入にはZEB化に関連する補助金を利用できる場合があります。

ZEBに関する基礎知識や補助金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

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5.まとめ

この記事ではBEMSについて以下の内容を解説しました。


  • BEMSの概要
  • BEMSの基本的なシステム構成
  • BEMSの導入によって行えること
  • ビルや施設にBEMSを導入するメリット


BEMSを導入することで、ビルにおける空調や照明などの設備の運用を制御して最適化できます。また、データの可視化によってエネルギー管理の改善もスムーズに進められるようになります。

さらに、省エネの実現とエネルギー運用の効率化が同時に図れることから、ZEB化の推進にも寄与します。

TAKEUCHIでは、オフィスビルをはじめ、学校や介護施設、工場などの施設も含む空調設備のリニューアルをトータルサポートしております。建物の省エネやZEBの達成を目指した空調設計を補助金の活用も含めてご提案いたします。

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