
フロン排出抑制法とは。施設管理者が遵守する義務について
フロン類は、工業的に広く用いられてきた化学物質です。化学的に扱いやすく人体への毒性もないことから空調設備の冷媒や断熱材の発泡剤などの用途で活用されてきました。
しかし、フロン類には地球のオゾン層を破壊する作用に加えて、二酸化炭素の100〜10,000倍もの強力な温室効果もあります。そのため、フロン類を規制して地球環境を保護することは、世界的な課題となっています。
日本においてフロン類を規制するために施行されている法律が、『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』(以下、フロン排出抑制法)です。
この記事では、フロン排出抑制法について、概要や対象機器、管理者の定義・義務を解説します。
出典:環境省『業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器を廃棄する際の規制が強化されました』/e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
管理者が行う空調設備の法定点検についてはこちらの資料をご確認ください。
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目次[非表示]
1.フロン排出抑制法とは
フロン排出抑制法は、地球温暖化の原因となるフロン類の排出を抑制するための法律です。
▼フロン排出抑制法の目的
第一条 この法律は、人類共通の課題であるオゾン層の保護及び地球温暖化(地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第二条第一項に規定する地球温暖化をいう。以下同じ。)の防止に積極的に取り組むことが重要であることに鑑み、オゾン層を破壊し又は地球温暖化に深刻な影響をもたらすフロン類の大気中への排出を抑制するため、フロン類の使用の合理化及び特定製品に使用されるフロン類の管理の適正化に関する指針並びにフロン類及びフロン類使用製品の製造業者等並びに特定製品の管理者の責務等を定めるとともに、フロン類の使用の合理化及び特定製品に使用されるフロン類の管理の適正化のための措置等を講じ、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
引用元:e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
▼フロン排出抑制法の全体像
画像引用元:環境省 フロン排出抑制法ポータルサイト『フロン排出抑制法の概要』
フロン排出抑制法では、使用の合理化によるフロン類排出の低減と、既に使用されているフロン類の適正な管理という二つの軸によって、フロン類を抑制しています。
そのため、フロン類やフロン類を使用する特定製品の製造者だけでなく、製品の使用者・管理者や、不要となった製品・フロン類を回収する事業者などもこの法律の対象となります。
▼フロン排出抑制法の対象者
目的 |
対象者 |
使用の合理化 |
|
管理の適正化 |
|
出典:環境省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き 』『フロン排出抑制法の概要』
2.フロン排出抑制法の対象となる特定製品
フロン排出抑制法においては、適正な管理を求める製品として“第一種特定製品”を規定しています。
第一種特定製品とは、冷媒としてフロン類が充填されている業務用のエアコンディショナーや冷蔵・冷凍機器のことです。ただし、自動車に搭載されているエアコンディショナーは第二種特定製品となり除外されます。
なお、ここでいうエアコンディショナーとは、空気の温度や湿度、流量、清浄度などを調節するための機器を指します。
▼第一種特定製品の例
- パッケージエアコン
- スポットクーラー
- 業務用除湿機
- 恒温恒湿器 など
出典:環境省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き 』/e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
3.フロン排出抑制法における管理者
フロン排出抑制法において、第一種特定製品の管理者には機器を適正に管理するためのさまざまな取り組みが求められます。
原則として、第一種特定製品の所有者が管理者となります。ただし、保守・修繕の契約がある場合には契約上で責務を負う者が管理者に該当します。
▼第一種特定製品の管理者
所有・管理の状態 |
管理者 |
自己で所有・使用している場合 |
製品の所有者 |
リースやレンタルの場合 |
日常的に使用している企業・法人 |
建物のオーナーが所有者の場合 |
建物のオーナー(製品の所有者) |
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4.第一種特定製品の管理者が負う義務
第一種特定製品の管理者は、機器の使用時と廃棄時にそれぞれ義務を負います。
4-1.機器の使用時
使用時には、機器を損傷リスクから守るとともに定期的な点検と記録を行うことが管理者に求められます。また、フロン類の漏えい時における対応も必要です。
▼機器の使用時における義務
- 損傷のリスクがない場所に設置する
- 法定点検を行う
- 点検の記録を保全する
- フロン類の漏えい時に対応・報告を行う
機器の設置においては強い振動が発生する場所を避けたうえで、点検や修理の空間を確保することが重要です。
フロン排出抑制法では管理者による法定点検を規定しています。法定点検には簡易点検と定期点検があり、点検頻度や実施者の規定などが異なります。
▼管理者に求める法定点検
対象の空調設備 |
点検頻度 |
点検実施者 |
||
簡易点検 |
業務用の空調設備 |
3ヶ月に1回以上 |
規定なし |
|
定期点検 |
圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上 |
50kW以上 |
1年に1回以上 |
機器等に関する十分な知見を有する者 |
7.5~50kW未満 |
3年に1回以上 |
法定点検を行う際、管理者は記録を行って機器の廃棄後3年まで保全する必要があります。
また、点検の結果フロン類の漏えいが判明した場合は、専門事業者に修理・充填を依頼します。年間の漏えい量が一定以上に達した場合には国への報告も必要です。
なお、空調設備の法定点検についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:環境省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き 』
4-2.機器の廃棄時
機器の廃棄時において、管理者は機器に充填されているフロン類の回収を依頼するほか、各種証明書や書面に関する対応を行います。
▼機器の廃棄時における義務
- フロン類の回収を専門事業者に依頼する
- 引取証明書の原本は3年間保存する
- 解体工事の場合には事前説明の書面を3年間保存する
また、機器の処分を別の事業者に依頼する場合、引取証明書の写しを作成して受け渡す必要があります。
▼フロン類の回収と機器の処分に関するやり取り
画像引用元:環境省『業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器を廃棄する際の規制が強化されました』
出典:環境省『業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器を廃棄する際の規制が強化されました』
5.まとめ
この記事では、フロン排出抑制法について以下の内容を解説しました。
- フロン排出抑制法の概要
- フロン排出抑制法の対象となる特定製品
- フロン排出抑制法における管理者
- 第一種特定製品の管理者が負う義務
フロン排出抑制法とは、フロン類の排出を抑制して地球温暖化を防ぐための法律です。フロン類について使用の合理化と管理の適正化によって排出を抑制します。
フロン排出抑制法では、フロン類が充填された業務用のエアコンディショナーを第一種特定製品として管理の対象にしています。業務用エアコンのほか、加湿・除湿設備なども該当します。
第一種特定製品の管理においては、管理者にさまざまな義務が生じます。機器を損傷のリスクから守り、法定点検と記録を欠かさずに行うことが重要です。また、フロン類の漏えい時や機器の廃棄時にも適切な対応が求められます。
TAKEUCHIでは、施設の空調設備に関するトータル改善を支援しております。施工後のアフターフォローも行っているため、法定点検への対応やメンテナンスについてもお任せください。
空調設備の法定点検についてはこちらの資料をご確認ください。