空調設備の法定点検とは? 管理者が守る義務と点検内容
学校や介護施設、工場、オフィスなどで使用される業務用空調設備には、法定点検を実施することが定められています。
2015年に施行された『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』(以下、フロン排出抑制法)によって、一定条件に当てはまる空調設備には定期的な点検義務が課されており、違反した場合には罰則を受ける可能性があります。
施設管理者のなかには、法定点検について「誰に実施が義務づけられているのか」「どのような内容・頻度で点検を行うのか」など詳しい内容を調べている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、フロン排出抑制法に基づく空調設備の管理と法定点検の内容、違反した際の罰則について解説します。
出典:環境省 フロン排出抑制法ポータルサイト『機器の点検』/環境省 経済産業省 国土交通省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法)』/e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
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目次[非表示]
1.フロン排出抑制法に基づく空調設備の管理
フロン排出抑制法では、オゾン層の破壊や地球温暖化の原因となる特定フロンを排出する製品を対象に、適正な管理を行うことが定められています。業務用の空調設備は、フロン排出抑制法の対象となる“第一種特定製品”に該当します。
▼フロン排出抑制法第2条3
3 この法律において「第一種特定製品」とは、次に掲げる機器のうち、業務用の機器(一般消費者が通常生活の用に供する機器以外の機器をいう。)であって、冷媒としてフロン類が充塡されているもの(第二種特定製品を除く。)をいう。
一 エアコンディショナー
二 冷蔵機器及び冷凍機器(冷蔵又は冷凍の機能を有する自動販売機を含む。)
引用元:e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
以下では、空調設備の管理者や課せられている義務について解説します。
出典:環境省 経済産業省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法) 第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き』/e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
1-1.空調設備の管理者
フロン排出抑制法における管理者とは、原則として特定フロン類が使用されている製品の所有者を指します。ただし、所有者以外が製品の使用や保守・修繕に関する責任を負う契約となっている場合には、その人物が管理者となります。
空調設備においては、以下の人物が管理者に該当します。
▼空調設備の管理者
所有・管理の状態 |
管理者 |
自己で所有・使用している場合 |
空調機の所有者 |
リースやレンタルの場合 |
日常的に使用している企業・法人 |
建物のオーナーが所有者の場合 |
建物のオーナー(空調機の所有者) |
出典:フロン排出抑制法ポータルサイト『管理者判断基準』/e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』/環境省 経済産業省 国土交通省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法)』
1-2.管理者に課せられる義務
フロン排出抑制法で定められた管理者には、フロン類の第一種特定製品を適正に管理するための義務が定められています。
▼フロン排出抑制法第5条
(指定製品及び特定製品の管理者の責務)
第五条 指定製品の管理者は、第三条第一項の指針に従い、使用フロン類の環境影響度の小さい指定製品の使用等に努めなければならない。
2 特定製品の管理者は、第三条第一項の指針に従い、特定製品の使用等をする場合には、当該特定製品に使用されるフロン類の管理の適正化に努めるとともに、国及び地方公共団体が特定製品に使用されるフロン類の管理の適正化のために講ずる施策に協力しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
空調設備の管理者に課せられた義務には、以下が挙げられます。
▼空調設備の管理者が負う義務
- 適切な場所に設置して使用環境を維持する義務
- 簡易・定期点検を適切な頻度で行う義務
- 修理や廃棄などの履歴を記録して保存する義務
- フロンが漏れた際の漏えい箇所の特定を行う義務
平常時においては、空調設備の破損・損傷を防止するために設置する場所と使用環境を管理するとともに、定期的に機器の点検を実施する必要があります。
フロン類の漏えいを発見した際には、速やかに漏えい箇所の特定と修理を実施します。また、機器の点検や修理、冷媒の充塡などを行った際には、履歴を記録して保存することも求められます。
出典:e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』/フロン排出抑制法ポータルサイト『機器の管理・廃棄 概要』/環境省 経済産業省 国土交通省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法)』
2.空調設備における法定点検の内容
空調設備の管理者に義務づけられた法定点検には、簡易点検と定期点検の2つがあります。それぞれ点検内容や頻度、点検実施者などに違いがあります。
▼管理者に求める法定点検
対象の空調設備 |
点検頻度 |
点検実施者 |
||
簡易点検 |
業務用の空調設備 |
3ヶ月に1回以上 |
規定なし |
|
定期点検 |
圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上 |
50kW以上 |
1年に1回以上 |
機器等に関する十分な知見を有する者 |
7.5~50kW未満 |
3年に1回以上 |
出典:フロン排出抑制法ポータルサイト『機器の点検』/環境省 経済産業省『十分な知見を有する者について』『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法)』
2-1.簡易点検
簡易点検は、室内機と室外機の外観から目視による検査を行い、フロン類が漏えいする兆候がないかを確認することです。空調設備を含むすべての第一種特定製品において、3ヶ月に1回の実施が義務づけられています。
▼簡易点検による検査項目
- 異常な振動や異音がないか
- 外観に損傷・摩耗・腐食がないか
- 油にじみや熱交換器に霜が付着していないか など
簡易点検は、管理者に専門的な資格がなくても安全が確保できる環境であれば実施することが認められています。
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出典:フロン排出抑制法ポータルサイト『機器の点検』/環境省 経済産業省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法) 第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き』
2-2.定期点検
定期点検は、簡易点検の内容に加えてより専門的な方法でフロン類の漏えい調査を実施することです。点検の実施頻度は、空調設備の出力によって異なります。
▼定期点検の実施頻度
空調設備の出力 |
実施頻度 |
50kW以上 |
1年に1回以上 |
7.5kW以上50kW未満 |
3年に1回以上 |
定期点検では、簡易点検の検査項目に加えて、直接法や間接法またはこれらを組み合わせた方法による検査を実施することが求められます。
▼直接法や間接法による検査内容
検査方法 |
検査内容 |
直接法 |
発泡液の塗布や検知器の使用、蛍光剤の注入などによって配管から漏えいするフロンの検知・特定を行う |
間接法 |
冷媒圧力や電流、吸込・吹出温度などを測定して、稼働中の空調機の運転値が日常値とずれていないかを確認する |
また、定期点検を行える人物は、社内・社外を問わず“十分な知見を有する人”のみと定められています。
▼十分な知見を有する人に該当する人物
- 冷媒フロン類取扱技術者
- 一定の資格を有しており、点検に必要な知識を習得するための講習を受講した人
- 空調設備の整備や点検に3年以上携わり、法令違反経験がない人
上記で挙げた“一定の資格”には、冷凍空調技士や冷凍空気調和機器施工技能士、冷凍空調工事保安管理者などが挙げられます。
施設内に十分な知見を有する人がいない場合には、外部の専門事業者に依頼して立会いのうえで定期点検を実施する必要があります。
出典:フロン排出抑制法ポータルサイト『機器の点検』/環境省 経済産業省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法) 第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き』『十分な知見を有する者について』
3.法令に違反した際の罰則
フロン排出抑制法に基づく法定点検や管理を実施しなかった場合には、罰則が科せられる可能性があります。
▼空調設備の管理に関する罰則の一例
罰則の対象 |
対象法令 |
罰則 |
点検義務を怠り、かつ行政からの命令に違反した場合 |
第16条 |
50万円以下の罰金 |
機器の点検・修理などの履歴義務を怠り、かつ行政からの命令に違反した場合 |
第16条 |
50万円以下の罰金 |
e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』を基に作成
空調設備の管理者は、簡易点検と定期点検を実施するサイクルや履歴を適正に管理して、法令に基づいた安全な運用ができるようにすることが重要です。
出典:環境省 経済産業省『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法)』/e-Gov法令検索『フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律』
4.まとめ
この記事では、空調設備の法定点検について以下の内容を解説しました。
- フロン排出抑制法に基づく空調設備の管理
- 空調設備における法定点検の内容
- 法令に違反した際の罰則
フロン排出抑制法の第一種特定製品に当たる業務用空調設備には、管理者の責務として法定点検を実施することが定められています。
目視による外観検査を行う簡易点検は、管理者に専門的な資格がなくても実施できます。一方の定期点検では、より詳細な測定を行う検査が必要となるため、実施できるのは十分な知見を有する人物のみと限られています。
法令違反のリスクを防ぐには、法定点検の時期やサイクル、点検履歴などを管理するとともに、必要に応じて専門事業者に依頼することが重要です。
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