高齢者施設における業務用エアコンの設定温度について。ヒートショックを予防する冬の寒さ対策とは
冬場の高齢者施設で特に重要となるものの一つに、業務用エアコンの温度設定が挙げられます。
高齢者は若年層よりも室温の影響を受けやすく、室温で血圧が変動することによって死亡事故につながるケースもあります。このことから、高齢者施設においては、利用者の安全と健康を守るための温度管理が求められます。
高齢者施設の管理者のなかには、「業務用エアコンの設定温度は何度にすればよいのか」「冬に温度管理を行う際のポイントが知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、冬の高齢者施設における温度管理について、重要性や業務用エアコンの設定温度、ポイントを解説します。
なお、省エネ効果の高いエアコンを選定するポイントはこちらの資料で解説しています。併せてご確認ください。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」
目次[非表示]
1.冬の高齢者施設で業務用エアコンの温度設定が重要な理由
冬の高齢者施設において業務用エアコンの温度設定が重要な理由として、ヒートショックのリスクが大きいことが挙げられます。
ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が上下に大きく変動して、失神・心筋梗塞・脳梗塞などの健康被害を引き起こすことです。
高齢になるほど室温によって血圧が変動しやすくなり、ヒートショックのリスクも大きくなります。特に冬場は暖房によって室温差が生じやすいことから、ヒートショックによる高齢者の死亡事故が多く見られています。
2.冬の高齢者施設における適切な温度設定
冬の高齢者施設においては、業務用エアコンを活用して施設全体を適切な温度に保つことで、利用者の健康維持やヒートショックによるリスクの軽減が期待できます。
2-1.基本は20℃に設定する
環境省では、冬季に快適性を損なわない室温として20℃を推奨しています。ただし、この数値はエアコンの設定温度ではなく室内で測定した温度です。
しかし、業務用エアコンの温度を設定しても、同じ部屋のなかで温度差が生じます。設定温度を20℃にしていても熱が天井に集中してしまい、足元付近の温度が20℃に届かないケースもあります。
業務用エアコンの温度設定を行う際は、20℃をベースに温度計も活用して、施設・部屋ごとに調整していくことが重要です。
出典:環境省『エアコンの使い方について』
2-2.各部屋の温度差は±5℃以内にする
ヒートショックを防ぐためには、各部屋の温度差を±5℃以内にすることが有効です。温度差を少なくすることで、血圧の大きな変動を防げると期待できます。
特に、脱衣所や浴室に関しては入浴時の温度差が大きくなりやすく、ヒートショックのリスクが高いことから重点的に温度管理を行う必要があります。
▼入浴時におけるヒートショックのリスク
画像引用元:政府広報オンライン『交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!』
出典:政府広報オンライン『交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!』
3.高齢者施設で冬に温度管理を行う際のポイント
高齢者施設で冬に温度管理を行う際は、湿度管理や全熱交換器の導入、施設の断熱化が重要となります。また、現在使用している業務用エアコンが古い場合はリニューアルを検討することも必要です。
3-1.温度管理とともに湿度管理も行う
冬季の高齢者施設において利用者が暖かく快適に過ごせるようにするには、温度だけでなく湿度も管理する必要があります。湿度は体感温度に影響するためです。
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなることから、体内の熱が外に放出されにくくなります。そのため、湿度が高いほど体感温度も高くなるとされます。
また、湿度を一定以上に保つと、利用者の抵抗力向上や飛沫感染の防止によって感染症対策にもつながります。
なお、湿度管理による感染症対策についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
また、業務用エアコンの加湿についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
3-2.全熱交換器を導入する
全熱交換器を導入すると、業務用エアコンによる温度管理をより効率的に行えるようになります。
全熱交換器とは換気設備の一つです。換気時の室温変化を抑える機能があるため、業務用エアコンへの負荷を抑えられ、消費電力の削減につながります。
また、室温を保ったままこまめに換気しやすくなることから、換気による感染症対策も行いやすくなると期待できます。
3-3.施設の断熱化を進める
冬季の温度管理においては、施設の断熱化が重要です。断熱性能が低い場合、床・壁・天井の温度が低くなりやすく、体感温度も低下してしまいます。
建物全体の断熱工事が難しい場合には、窓の断熱を行うだけでも効果が期待できます。浴室に窓がある場合には、断熱化することでヒートショック対策にもなります。
3-4.古い業務用エアコンのリニューアルを検討する
施設に導入している業務用エアコンが古い場合には、リニューアルを検討する必要があります。
業務用エアコンが古いと、最新の機器よりも性能が劣ったり、消費電力量が大きくなったりしやすいといえます。また、突発的な故障・不具合によって稼働が停止するリスクもあります。
業務用エアコンを安定的に稼働させて適切な温度管理を実施するためには、15年を目途にリニューアルすることが有効です。
なお、空調をリニューアルする際のポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」
4.まとめ
この記事では、冬の高齢者施設における業務用エアコンについて、以下の内容を解説しました。
- 冬の高齢者施設で温度設定が重要な理由
- 冬の高齢者施設における適切な温度設定
- 高齢者施設で冬に温度管理を行う際のポイント
冬の高齢者施設においては、ヒートショックをはじめとする血圧の変動による健康リスクを低減するために、業務用エアコンを活用した温度管理が重要となります。
温度管理を行う際は、湿度や換気、断熱化についても意識することがポイントです。また、業務用エアコンが古い場合には15年を目途にリニューアルすることで安定的に稼働させられるようになり、温度管理を適切に実施しやすくなります。
TAKEUCHIでは、目に見えない空気の流れを可視化する気流シミュレーションの結果を基に、業務用エアコンの見直しを提案しております。空間ごとの温度のムラを把握して、高効率な運転ができる空調設備へと最適化を図ります。
なお、省エネ効果の高いエアコンを選定するポイントはこちらの資料で解説しています。併せてご確認ください。
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