
高齢者施設の熱中症対策で重要な空調管理とは?施設管理者が見直したい設備のポイント
介護・福祉施設や病院では、高齢者を熱中症から守ることが施設管理者の重要な責務となります。一方で、熱中症対策を高齢者本人の体調管理や水分補給だけに任せてしまうと、十分な対策とはいえません。施設側が室温や湿度を適切に維持できているかが重要となります。
エアコンが稼働していても、室外機の設置環境やフィルターの汚れ、冷媒・熱交換器の状態によっては、本来の冷房能力を発揮できない場合があります。
本記事では、高齢者が熱中症になりやすい理由を踏まえながら、空調性能を低下させる原因と、施設で取り組むべき空調管理について解説します。
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目次[非表示]
1.高齢者の熱中症リスクと室内環境の関係
高齢者を熱中症から守るためには、まず屋内で熱中症が発生する背景を理解し、施設として管理すべきリスクを把握することが重要です。
環境省の資料『熱中症 環境保健マニュアル~総論~』には、2018年から2023年まで、毎年亡くなった方の8割以上が65歳以上の高齢者であると記載されており、高齢者がいかに熱中症の危険にさらされているかが分かります。

画像引用元:環境省『熱中症 環境保健マニュアル~総論~』
出典:環境省『熱中症 環境保健マニュアル~総論~』
1-1.高齢者は体感だけでは室温を判断しにくい
高齢者は、温度を感じる機能や発汗機能が低下するため、室内が高温多湿になっていても暑さを自覚しにくい傾向があります。 その結果、エアコンの使用や水分補給が遅れ、自覚がないまま熱中症へ進行するリスクが高まります。そのため、介護施設では入居者本人の体感だけに頼らず、スタッフが室温や入居者の状態を確認しながら適切に空調を管理することが重要です。
また、エアコンの設定温度と実際の室温は必ずしも一致するとは限りません。環境省も、日射や建物の構造などによって、設定温度どおりの室温にならない場合があるとしています。 例えば、空調設備の能力低下や室外機の放熱不良などがあると、設定温度を26℃にしていても、室温が30℃近くまで上昇するケースも考えられます。
そのため、本人の体感だけに頼るのではなく、室温計などで実際の室温を確認しながら、空調設備を適切に維持管理することが重要です。
出典:環境省 デコ活 ウェブサイト『「クールビズ28℃」の真実多くの人が「○○の○○○○」と思っていた!?』
1-2.室内環境が適切でなければ屋内でも熱中症は発生する
厚生労働省の資料『高齢者のための熱中症対策』では、高齢者の熱中症は屋内で発生するケースも多く、屋内だからといって安全とはいえないことが示されています。室温や湿度が適切に管理されていない場合は、エアコンを使用していても室内環境が十分に保たれず、熱中症リスクが高まる可能性があります。
そのため、介護施設では利用者本人の体感だけに頼るのではなく、室温や湿度を継続的に確認しながら、空調設備によって適切な室内環境を維持することが重要です。
出典:厚生労働省『高齢者のための熱中症対策』
2.高齢者の熱中症対策では空調管理が重要
屋内の熱中症リスクを低減するためには、水分補給など個人への対策だけでなく、空調設備によって適切な室内環境を維持することが重要です。施設側が空調設備を適切に管理し、安全な室内環境を維持することが熱中症予防につながります。
2-1.高齢者施設では室温・湿度を数値で管理する
環境省は、高齢者の熱中症予防として、空調設備を活用し、夏場は室温28℃程度を目安に適切な室温・湿度を保つことを推奨しています。
ただし、熱中症リスクは室温だけで決まるものではありません。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体内の熱を十分に放出できないため、同じ28℃でも熱中症リスクが高まることがあります。
そのため、室温だけでなく、湿度や輻射熱も考慮したWBGT(暑さ指数)も合わせて確認・管理することが重要です。温湿度計やWBGT計を活用して客観的な数値を基準に空調を運用することで、熱中症リスクをより適切に判断できます。
また、個別空調や温湿度の自動管理機能を備えたシステムを導入すれば、居室ごとの環境を細かく調整できるため、利用者の快適性を保ちながら省エネにもつながります。
出典:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』
2-2.空調設備は性能を維持して初めて効果を発揮する
室温・湿度やWBGTを適切に管理するためには、空調設備が本来の性能を発揮し、設定した環境を安定して維持できる状態で稼働していることが前提です。
しかし、室外機の放熱不良やフィルターの目詰まり、熱交換器の汚れなどがあると、エアコンを運転していても冷房能力が十分に発揮されず、設定温度まで室温が下がらないことがあります。
その結果、管理者は冷房を使用しているつもりでも、実際には熱中症リスクの高い室内環境になっている可能性があります。そのため、定期的な点検やメンテナンスによって空調設備の性能を維持し、安全な室内環境を継続して保つことが重要です。
3.空調設備が本来の性能を発揮できなくなる原因
空調設備は稼働していても、室外機の設置環境や機器内部の状態によっては、本来の冷房能力を十分に発揮できない場合があります。その結果、設定温度どおりに運転していても室温が下がらず、適切な室内環境を維持できない可能性があります。
3-1.室外機の放熱不良で冷房効率が低下する
室外機は、室内の熱を屋外へ放出する役割を担っています。そのため、放熱が十分に行えないと熱を効率よく排出できず、本来の冷房能力を発揮できなくなります。
例えば、直射日光が当たる場所や風通しの悪い場所では、排出した熱を再び吸い込む「ショートサーキット」が発生しやすくなり、放熱効率が損なわれます。
日よけの設置や風通しの改善、排熱ダクトの整備などによって放熱しやすい環境を整えることで、空調設備本来の性能を維持しやすくなり、室温を安定して管理できるようになります。
3-2.エアコン内部の汚れや劣化で冷房能力が低下する
フィルターの汚れや熱交換器の目詰まり、冷媒ガスの漏れなどは、冷房能力を低下させる代表的な要因です。これらは空気の流れや熱交換効率を妨げるため、設定温度まで室温が下がりにくくなります。
また、空調設備を長期間使用すると、各部品の摩耗や腐食などの経年劣化が進みます。故障が発生していなくても、経年劣化によって冷暖房性能が低下したり、内部にカビが発生したりすることで、快適で衛生的な室内環境を維持しにくくなる可能性があります。
そのため、定期的な点検や部品交換、内部洗浄を実施し、空調設備を適切な状態に保つことが重要です。性能を維持することで、冷暖房効率を保ちながら安定した室内環境を維持しやすくなります。
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4.空調設備は定期的な点検と更新で性能を維持する
安定した室内環境を維持するためには、日常的な運用に加え、設備の状態を定期的に確認し、必要に応じて点検や更新を行うことが重要です。空調設備は経年劣化によって冷房能力が徐々に低下するため、日常的に稼働していても性能の低下に気づきにくい場合があります。
そのため、普段は問題なく稼働していても、外気温が高くなる猛暑日には冷房能力が追いつかず、設定温度まで室温を下げられないケースも少なくありません。特に高齢者施設では、室温の上昇が利用者の熱中症リスクにつながるため、本格的な夏を迎える前に室外機の状態や気流、熱負荷などを専門的な視点で点検・評価することが求められます。
性能低下を早期に発見・改善することで、適切な室内環境を維持しやすくなるだけでなく、熱中症リスクや突発的な空調トラブルの防止にもつながります。
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5.専門的な診断が最適な空調環境の実現につながる
高齢者が安心して過ごせる空調環境を実現するためには、高性能な空調設備を導入するだけでは十分ではありません。建物の構造や利用状況に応じて気流や温度分布を考慮した設計・診断を行うことで、空調設備の性能を十分に発揮しやすくなります。
5-1.気流シミュレーションで冷えムラを事前に防ぐ
介護・福祉施設では、建物の構造や家具・間仕切りなどの影響によって空気の流れが偏り、一部のエリアだけ十分に冷えない「冷えムラ」が発生することがあります。人の感覚だけで空気の流れや温度分布を正確に把握することは難しく、空調機の設置位置や風向きによっても冷暖房効率は大きく変わります。
TAKEUCHIでは、最新の分析技術を用いて空気の流れを可視化し、空調設備の改善をご提案しています。3次元コンピューター解析(CFD)による気流シミュレーションを実施することで、施工前に温度分布や気流を可視化し、データに基づいた機器配置や気流設計を検討できます。その結果、冷えムラを抑えた効率的な空調環境の実現につながります。
5-2.現状診断から設備提案、補助金活用の相談まで対応
空調設備の診断や機器選定、補助金制度の確認には専門的な知識が求められるため、施設管理者だけで最適な判断を行うことは容易ではありません。
TAKEUCHIでは、施設空調・大空間空調で培った豊富な実績を基に、現状診断から施設に適した設備の提案まで対応しています。また、利用可能な補助金制度に関する相談や、申請時に必要な情報提供・手続き支援も行っています。
診断・設備提案・施工を通じて、施設ごとの課題に応じた空調環境づくりを支援します。
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6.まとめ
この記事では、高齢者の熱中症対策について以下の内容を解説しました。
高齢者の熱中症リスクと室内環境の関係
高齢者の熱中症対策では空調管理が重要
空調設備が本来の性能を発揮できなくなる原因
空調設備は定期的な点検と更新で性能を維持する
専門的な診断が最適な空調環境の実現につながる
高齢者施設の熱中症対策では、水分補給など利用者への対策だけでなく、施設側が適切な室内環境を維持することが重要です。特に、高齢者は暑さを自覚しにくいため、「エアコンが動いているから安心」と考えるのではなく、室温・湿度を数値で管理するとともに、空調設備が本来の性能を発揮できる状態を維持する必要があります。
また、建物の構造や設備の状態によって最適な空調環境は異なるため、必要に応じて専門的な診断を活用することも有効です。
TAKEUCHIでは、現状診断から設備提案、気流シミュレーション、補助金制度に関する相談まで対応しています。高齢者が安心して過ごせる空調環境づくりをご検討の際は、お気軽にご相談ください。






