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セントラル空調更新で失敗しないために|方式変更の選択肢とメリット・デメリット

大規模な施設などで採用されている「セントラル空調(中央方式)」は、一つの熱源機器で建物全体の温度を一括管理しやすい点が特徴です。一方で、設備の老朽化やメーカーの部品供給の終了、エネルギーコストの高騰などを背景に、設備の更新時期を迎えている施設も少なくありません。

いざ更新時期を迎えても「今の方式のまま新しい機器にするべきか」「自施設に最適な方式はどれか」と判断に迷う施設管理者の声も聞かれます。そうしたなか、近年は、部屋ごとの細かな温度管理や、未使用エリアのみを停止できる省エネ性を理由に、セントラル空調から個別分散空調(マルチエアコン)へ切り替えるケースが増えています。

本記事では、現在セントラル空調を利用しており、将来的な設備の入れ替えやランニングコストの削減を検討されている方へ向けて、更新時に検討される代表的な空調方式について解説します。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「【省エネ課題の解決ガイド】省エネ効果を最大化する空調選びのポイントを紹介」

目次[非表示]

  1. 1.セントラル空調の更新が必要となる主な理由
    1. 1-1.設備の老朽化による故障リスクの増加
    2. 1-2.部品供給終了による維持管理の難しさ
    3. 1-3.省エネ性能向上への対応
  2. 2.セントラル空調更新時に検討される3つの空調方式
    1. 2-1.①セントラル空調(中央方式)
    2. 2-2.②個別分散空調(マルチエアコン)
    3. 2-3.③ゾーン単位で制御する空調システム
  3. 3.学校・病院・福祉施設でマルチエアコンが選ばれる主な理由
    1. 3-1.部屋ごとの細やかな温度管理が求められている
    2. 3-2.運用コスト(ランニングコスト)を削減しやすい
    3. 3-3.更新工事の柔軟性が高い
  4. 4.空調更新で失敗しないためのポイント
    1. 4-1.現在の利用状況を正確に把握する
    2. 4-2.将来の施設運営や空間設計も考慮する
    3. 4-3.補助金活用も含めて検討する
  5. 5.まとめ

1.セントラル空調の更新が必要となる主な理由

稼働から15年~20年以上経過した設備では、更新を検討するケースが増えます。使い続けるのではなく根本的な更新を検討しなければならない3つの理由を解説します。

1-1.設備の老朽化による故障リスクの増加

セントラル空調を長期間使用していると、空調機本体だけでなく、地下や屋上に設置されたチラーやボイラーといった熱源設備が経年劣化を起こします。設備の劣化が進むと修理の頻度が増し、メンテナンス費用が施設運営の予算を圧迫します。

さらに一括管理という構造上、熱源機器が一ヶ所でも故障すると全館の空調が一斉にストップするリスクがあります。真夏や真冬に突発的な空調停止が起きれば、施設運営に影響を及ぼすため、完全に停止する前に対策を講じる必要があります。

1-2.部品供給終了による維持管理の難しさ

「まだ動いているから大丈夫」と修理を繰り返していても、いずれ限界を迎えます。機器の製造終了後およそ9〜10年を目安に、メーカーが定める補修用性能部品の保有期間が終了すると、万が一故障した際に修理用部品の調達が困難になります。

完全に稼働できなくなる前に、部品供給の終了時期を見越し、計画的に設備更新を進めることが求められます。

1-3.省エネ性能向上への対応

近年のエネルギー料金の上昇は、大規模施設の運営コストを圧迫する要因になります。セントラル空調は、建物全体を前提に設計されているため、利用状況が細かく変化する施設では、部屋単位での運転制御が難しいケースがあります。

こうした光熱費の高騰に対抗し、施設全体の省エネ性能を向上させるためには、エネルギー消費の無駄を根本から抑える仕組みへの見直しが不可欠です。最新の高効率機器への更新や、エネルギーを「必要な場所に必要なだけ」届けるシステムへ刷新することで、無駄な電力消費を確実に抑えられます。

2.セントラル空調更新時に検討される3つの空調方式

セントラル空調の更新を検討する際、必ずしも同じセントラル空調を導入する必要はありません。ここでは、代表的な3つの空調方式の仕組みとメリット・デメリットを解説します。

2-1.①セントラル空調(中央方式)

建物全体を一括管理するセントラル空調のまま、熱源機器や配管などを最新モデルへ入れ替える方法です。これまでの管理・運用体制を変更せずに、最新機器の省エネ性能を取り入れることができます。

▼メリット・デメリット

メリット

・温度や湿度の管理を建物全体で統一しやすい
・室内側に大型の機械がないため、稼働音が気になりにくい

デメリット

・配管工事などを伴い更新費用が高額になりやすい
・故障時の影響範囲が全館に及ぶ
・部屋やエリアごとの細かな温度調整が構造上難しい

2-2.②個別分散空調(マルチエアコン)

1つの室外機に複数の室内機を接続し、部屋やエリアごとに独立して空調を制御できる方式です。ビル用マルチエアコンなどが該当します。近年、部屋ごとの細かな温度管理や電力消費の削減を目的に、更新時の選択肢として採用されるケースも増えています。

▼メリット・デメリット

メリット

・教室や病室ごとに個別の温度・風量設定が可能
・未使用エリアのみ運転停止が可能で、電力消費を抑えられる
・故障しても影響範囲がその系統のみに限定される

デメリット

・新たに室外機を設置するためのスペース確保が必要
・施設の構造によっては、大規模な配管経路の変更工事が発生する

空調方式の選定や省エネ化について詳しく知りたい方は、以下の資料もあわせてご覧ください。省エネ化する際にチェックしたい「換気・気流」についても解説しています。

2-3.③ゾーン単位で制御する空調システム

建物全体を一括管理せずに、利用状況に応じてエリアやフロアといった「ゾーン(区画)」単位で空調を制御する方式です。エリアごとに冷風・温風の量を自動的に増減させて室温をコントロールします。

▼メリット・デメリット

メリット

・必要なエリアのみの運転や風量調整が可能
・利用時間帯に応じた柔軟な運用ができ、エネルギー消費を抑えられる

デメリット

・導入前の段階で、適切なゾーニング(区画分け)の計画が必要
・間仕切りの変更など施設のレイアウトを変更した場合、空調効率が落ちる可能性がある

3.学校・病院・福祉施設でマルチエアコンが選ばれる主な理由

近年、大規模な学校や病院、福祉施設などで、従来のセントラル空調から個別分散空調(マルチエアコン)へ更新する事例が増えています。ここでは、マルチエアコンが選ばれる理由を解説します。

3-1.部屋ごとの細やかな温度管理が求められている

学校の教室や職員室、病室や診察室など、施設内にはさまざまな用途の部屋が存在します。そこで過ごす利用者の体感温度や体調は一人ひとり異なります。一括管理を基本とするセントラル空調では、「こちらの部屋は寒すぎる」「あちらの部屋は暑い」といった個別の要望に対応しきれない課題がありました。

マルチエアコンであれば、部屋の環境や利用者のニーズに合わせて個別に運転できるため、きめ細やかな温度・風量の設定が可能になり、施設の快適性が向上します。

3-2.運用コスト(ランニングコスト)を削減しやすい

24時間フル稼働しているエリアや、夜間・休日は無人になるエリアなど、施設内で稼働状況にバラつきがある場合、マルチエアコンが活躍します。

セントラル空調のように誰もいない空間まで冷やし続ける必要はなく、未使用エリアの空調を個別に停止できます。さらに、最新のインバーター制御技術を搭載した機器を導入することで、電力消費を最適化できます。このように、必要な場所だけ稼働させる運用により、ランニングコストの削減を可能にします。

3-3.更新工事の柔軟性が高い

セントラル空調は、熱源機器や全館を巡る配管を入れ替えるため、全館一斉に工事を行う必要があります。しかし、学校の授業や病院の診療などを長期間停止することは難しいため、設備の老朽化が進んでも更新を先送りする施設も少なくありません。

一方、マルチエアコンへ切り替える場合、建物を複数のエリアに分けて段階的に工事を進めることが可能です。長期休暇や休診日を活用し、施設運営を継続したまま計画的に設備を更新できる点がメリットといえます。

4.空調更新で失敗しないためのポイント

セントラル空調の更新は、施設運営における重要なプロジェクトです。工事後に「効きが悪い」「使い勝手が想定と違う」といった事態を防ぐため、計画段階で押さえておきたいポイントを解説します。

4-1.現在の利用状況を正確に把握する

まずは、「どの部屋を」「どの時間帯に」「どの程度の人数で利用しているか」という現状を洗い出します。稼働状況の違いを明確にすることで、エリアごとに必要な空調能力が見えてきます。これにより、「念のため」という理由で馬力の大きな機器を選んでしまう「オーバースペック(過剰投資)」を防ぎ、最適な機器を適切なコストで配置できます。

4-2.将来の施設運営や空間設計も考慮する

空調設備は何年も使用するため、現状の課題解決だけでなく、5年後、10年後の施設運営も見据えた設計が必要です。将来的な利用人数の増減や、部屋の用途変更(会議室から執務室への変更など)の可能性も考慮し、レイアウト変更にも対応しやすい空調システムを選定します。

また、セントラル空調から空調方式を変更する際は、事前の「気流シミュレーション」の実施が有効です。建物の構造や窓の位置、障害物を考慮して、空気の流れを可視化することで、更新後に「風が届かず冷えない場所ができた」といった温度ムラや気流の偏りを未然に防ぐことができます。

4-3.補助金活用も含めて検討する

空調設備の更新には、多額の初期費用がかかります。これがネックとなり、改修に踏み切れないケースもあります。

国や自治体では、高効率空調設備の導入を支援する補助制度が用意されています。

省エネ補助金や設備更新補助金、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)関連の支援制度を適切に活用することで、導入費用を抑えることが可能です。計画の初期段階から補助金制度に精通した専門業者に相談し、制度の要件を満たす設備設計を行うことがコスト削減の鍵となります。

なお、東京都のゼロエミッション補助金(2026年度)の概要やスケジュールについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

→【おすすめ!】記事と合わせて読みたい「補助金活用ガイド」空調設備導入に活用できる補助金と申請ステップを紹介

5.まとめ

この記事では、セントラル空調の構造的な課題と更新時に検討される空調方式について以下の内容を解説しました。

  • セントラル空調の更新が必要となる主な理由

  • セントラル空調更新時に検討される3つの空調方式

  • 学校・病院・福祉施設でマルチエアコンが選ばれる主な理由

  • 空調更新で失敗しないためのポイント

セントラル空調の更新は単なる老朽化対策ではなく、施設全体のエネルギー効率や快適性を根本から見直す機会です。一括管理のまま最新機器にするのか、必要な場所だけ稼働できるマルチエアコンやゾーン空調へ移行するのかは、施設の利用状況によって異なります。

特に、学校・病院・福祉施設のように、部屋ごとの温度管理や、施設を稼働させながらの工事が求められる環境では、マルチエアコンへの更新が有効な選択肢となります。

なお、空調更新後に温度ムラが発生し、快適性や省エネ性を損なうケースもあるため、施設の特性を導入前の段階で把握し、気流シミュレーションを用いた機器選定が不可欠です。

TAKEUCHIでは、補助金制度を活用したリニューアル計画の立案から、気流シミュレーションを用いた機器選定、最適な投資プランの作成などをサポートいたします。セントラル空調の更新をご検討中の方は、ぜひ下記資料をご活用ください。

→【おすすめ!】記事の最後に読みたい「気流シミュレーションで実現する省エネと快適性を両立した空調最適化」

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